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【解説】住宅が建つ宅地擁壁の上載荷重は10kN/m²が目安

擁壁の計算では上載荷重10kN/m²がよく使われますが、10kN/m²という値の根拠を知りたい人は多いと思います。

擁壁の上載荷重は、擁壁の設置箇所の実状に応じて設定する荷重です。そのため、上載荷重の具体的な値は、許可権者の技術的基準によって異なります。

例えば、住宅地の擁壁でも、上載荷重を5kN/m²とする基準と、10kN/m²とする基準があります。

この記事では、住宅が建つ擁壁の上載荷重の目安と、上載荷重を土圧に入れる方法を解説します。

この記事を読むことで、上載荷重の値の意味と、住宅を計画するときに確かめる事項を理解することができるようになります。

住宅が建つ擁壁の上載荷重は木造2階建て程度で10kN/m²が目安

擁壁の上載荷重とは、擁壁の背面の地表面に載る建築物、工作物、積雪などの荷重のことです。

宅地擁壁の設計では、木造2階建て程度の戸建て住宅に対して、上載荷重を10kN/m²とするのが一般的です。

一方で、建物の荷重が擁壁に影響しないことが明らかな土地では、5kN/m²を認める許可権者もあります。

また、重い建物を予定する土地では、実状の荷重を設定する必要があります。

擁壁の背面の土地利用上載荷重の目安上載荷重の考え方
木造2階建て程度の戸建て住宅10kN/m²宅地擁壁で一般的な値
建物の荷重が擁壁に影響しないことが明らかな土地5kN/m²許可権者によって認められる値
3階建てや鉄筋コンクリート造などの重い建物実状の荷重予定建築物の規模と種類から設定
自動車が通る道路10kN/m²道路擁壁の活荷重

擁壁の上載荷重の値は許可権者の技術的基準によって異なる

擁壁の上載荷重の値は、許可権者の技術的基準によって異なります。次の表は、宅地擁壁の上載荷重を定めた技術的基準の例です。

許可権者宅地擁壁の上載荷重
兵庫県10kN/m²を標準とし、予定建築物が上回る場合は実情に応じて設定
神戸市建築物などの固定荷重として10kN/m²(実状が上回る場合は実状の値)
枚方市建築物が確実な場合は10kN/m²以上(影響しないことが明らかな場合は5kN/m²でも可)
仙台市擁壁上部の利用形態に応じて5~10kN/m²程度
高松市宅地等の擁壁は5kN/m²(実情に応じて設定)

擁壁を設計する前に、許可権者の技術的基準で上載荷重の値を確かめましょう。

擁壁の上載荷重を10kN/m²とする理由は木造2階建ての住宅を想定しているから

擁壁の上載荷重を10kN/m²とする理由は、10kN/m²が木造2階建て程度の住宅を想定した値だからです。

10kN/m²は、一般的な戸建て住宅が建つことを想定して、複数の自治体の技術的基準で標準とされている値です。

なお、10kN/m²の上載荷重は、擁壁の背面の地表面全体に一様に載る荷重として扱われます。

上載荷重の大きさは、土の厚さに換算すると具体的に把握することができます。

換算高さとは、上載荷重を背面土の単位体積重量で割った土の厚さのことです。

例えば、背面土が砂質土(17kN/m³)の場合、10kN/m²の換算高さは約0.6mです。

つまり、背面の地表面全体に約0.6mの土を盛った状態と同じ荷重を受けます。

土圧の計算では、背面土が換算高さだけ高くなったと仮定して土圧を求める方法も一般的です。

木造2階建ての住宅でも基礎の接地圧が10kN/m²を超える場合がある

木造2階建ての住宅でも、基礎の接地圧が10kN/m²を超える場合があります。

重い仕様の住宅を擁壁の近くに建てる場合は、建物の荷重と擁壁の設計条件を照らし合わせましょう。

擁壁の上載荷重は長方形の分布の土圧として擁壁に作用する

上載荷重による土圧は擁壁の高さ方向に一定の大きさで作用する

上載荷重による土圧は、擁壁の高さ方向に一定の大きさで作用します。

土の重さによる土圧は三角形の分布になり、上載荷重による土圧は長方形の分布になります。

土圧の種類土圧の分布の形土圧の合力合力の作用位置
土の重さによる土圧三角形Pa=1/2×Ka×γ×H²下端からH/3
上載荷重による土圧長方形Pq=Ka×q×H下端からH/2

試行くさび法では上載荷重を土くさびの重さに加える

試行くさび法とは、すべり面の角度を変えながら、土くさびが擁壁を押す力の最大値を探す方法のことです。

試行くさび法の計算では、土くさびの上面に載る範囲の上載荷重が、土くさびの重さに加えられます。

背の低い擁壁ほど土圧に占める上載荷重の割合が大きくなる

背の低い擁壁ほど、土圧に占める上載荷重の割合が大きくなります。

次の表は、砂質土(γ=17kN/m³、Ka=0.40)で、上載荷重を10kN/m²とした場合の計算例です。

土圧を求める高さH土の重さによる土圧上載荷重による土圧土圧の合力に占める上載荷重の割合転倒モーメントに占める上載荷重の割合
2.0m13.6kN/m8.0kN/m約37%約47%
3.0m30.6kN/m12.0kN/m約28%約37%
5.0m85.0kN/m20.0kN/m約19%約26%

宅地擁壁と道路擁壁では上載荷重の扱いが異なる

宅地擁壁と道路擁壁では、上載荷重が同じ10kN/m²でも、荷重の扱いが異なります。

宅地擁壁では、建築物の荷重を固定荷重として扱い、常時と地震時に同じ上載荷重を用います。

一方で、道路擁壁の上載荷重は自動車などの活荷重のため、地震時には作用させません。

比較項目宅地擁壁道路擁壁
上載荷重の中身建築物、工作物、積雪などの荷重自動車などの活荷重
上載荷重の値実状に応じて設定(木造2階建て程度は10kN/m²が一般的)一般にq=10kN/m²
地震時の上載荷重地震時も上載荷重を組み合わせる地震時は上載荷重を組み合わせない
主な基準盛土等防災マニュアルと許可権者の技術的基準道路土工-擁壁工指針

道路擁壁の設計に慣れた人が宅地擁壁を設計すると、得てして地震時の上載荷重が抜け落ちてしまうため注意が必要です。

準拠する基準に合わせて、荷重の組合せを確認しましょう。

設計者が住宅の計画で擁壁の上載荷重を確かめるときの注意点

3階建てや鉄筋コンクリート造の住宅は実状の荷重を上載荷重とする

上載荷重の10kN/m²は、木造2階建て程度の住宅を想定した値です。

したがって、3階建ての住宅や鉄筋コンクリート造の住宅は、10kN/m²の想定を超える場合があります。

重い建物を予定する土地では、予定建築物の規模と種類から上載荷重を設定しましょう。

また、擁壁を造ったあとに重い建物へ計画を変更する場合も、擁壁の設計条件を確かめる必要があります。

大臣認定擁壁は認定の使用条件を超える上載荷重で使えない

大臣認定擁壁とは、国土交通大臣が、政令の規定による擁壁と同等以上の効力があると認めた擁壁のことです。

宅地用のL型の大臣認定擁壁には、擁壁上面の積載荷重を10kN/m²以下とする使用条件を定めた製品があります。

大臣認定擁壁の上に重い建物を建てる場合は、製品ごとの使用条件を確かめましょう。

練積み造擁壁は上載荷重5kN/m²程度を想定した擁壁である

間知石練積み造などの練積み造擁壁は、上載荷重が5kN/m²程度の条件を想定した擁壁です。

そのため、木造2階建て程度の住宅の荷重は、練積み造擁壁の想定を超える場合があります。

練積み造擁壁の近くに住宅を建てる場合は、建物の荷重を擁壁に掛けない基礎の計画を許可権者と協議しましょう。

上載荷重を確認できない既存擁壁には建物の荷重を掛けない措置が必要

既存擁壁の上載荷重を確認できない場合は、建物の荷重を擁壁に掛けない措置が必要です。

代表的な措置には、次の2つがあります。

  • 深基礎:建物の基礎を、安息角の線より下まで深くする
  • 地盤改良:改良した地盤で建物の荷重を支え、擁壁に荷重を伝えない

安息角とは、土が崩れずに安定する斜面の角度のことで、盛土で30度、切土で45度が慣用的に用いられます。

上段の擁壁が近い二段擁壁は一体の擁壁として設計する

上段の擁壁が土質に応じた角度の線を超える位置にある場合、上下の擁壁は二段擁壁とみなされます。

二段擁壁とみなされた上下の擁壁は、一体の擁壁として設計する必要があります。

また、二段擁壁では、下段の擁壁に設計で見込んだ以上の荷重が掛からないように措置する必要があります。

代表的な措置には、次のような方法があります。

  • 上段の擁壁の根入れを深くする
  • 基礎地盤を改良する
  • 鉄筋コンクリート造の擁壁では、杭基礎にする

まとめ

以上。本記事では住宅が建つ擁壁の上載荷重の目安と、上載荷重を土圧に入れる方法を解説しました。

本記事のまとめは以下のとおりです。

  • 住宅が建つ擁壁の上載荷重は、木造2階建て程度の戸建て住宅で10kN/m²が目安
  • 擁壁の上載荷重の値は許可権者の基準によって異なり、5kN/m²とする基準もある
  • 上載荷重による土圧は長方形の分布で、合力は擁壁の下端からH/2の位置に作用する
  • 低い擁壁ほど、土圧に占める上載荷重の割合が大きい
  • 宅地擁壁では、地震時にも上載荷重を組み合わせる
  • 3階建てや鉄筋コンクリート造の住宅は、実状の荷重で上載荷重を設定する
  • 上載荷重を確認できない既存擁壁には、深基礎や地盤改良で建物の荷重を掛けない

擁壁を設計するときは、まず許可権者の技術的基準で、上載荷重の値と荷重の組合せを確かめましょう。

そのうえで、擁壁の上に建つ予定の住宅の規模と構造を確認し、上載荷重の想定を超えないかを確かめるようにしましょう。

参考にした基準・資料

  • ぎょうせい『盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕』令和5年11月 第二次改訂版 Amazonで見る
  • 一般社団法人 日本建築学会『小規模建築物基礎設計指針』2025年12月 第2版
  • 公益社団法人 日本道路協会『道路土工-擁壁工指針(平成24年度版)』平成24年7月 Amazonで見る
  • 宅地造成及び特定盛土等規制法施行令

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