擁壁のエラスタイトの間隔は?伸縮目地を入れる間隔の目安と位置を解説
擁壁のエラスタイトを、何メートルおきに入れればよいか分からない
無筋コンクリートと鉄筋コンクリートで、伸縮目地の間隔が同じでよいのか迷っている
伸縮目地とひび割れ誘発目地の違いが、よく分からない
このような悩みを持っている人は多いと思います。
擁壁のエラスタイト(通称:エラス)とは、伸縮目地のすき間に挟む、アスファルトを主な材料にした目地板のことです。
この記事では、伸縮目地が必要な理由と、擁壁の構造ごとの間隔の目安について説明します。
結論から申しますと、エラスタイトを入れる間隔は、無筋コンクリートの擁壁では10m以下、鉄筋コンクリートの擁壁では15〜20m程度が目安です。
なお、宅地造成に用いる擁壁では、伸縮目地を20m以内ごとに1か所設けるのが原則です。
さらに、基礎地盤の条件が変化する所や、擁壁の高さが大きく異なる所、隅角部の近くにも設置が必要です。
擁壁のエラスタイトの間隔は、伸縮目地の間隔で決まる
擁壁のエラスタイトは、伸縮目地のすき間を埋めるために、伸縮目地に入れる材料です。
伸縮目地の間隔の目安は、擁壁の構造によって異なります。(下表のとおり)
| 擁壁の構造(形式の例) | 伸縮目地の間隔 |
|---|---|
| 無筋コンクリート(重力式擁壁など) | 10m以下 |
| 鉄筋コンクリート(L型・逆T型などの片持ばり式擁壁、控え壁式擁壁) | 15〜20m程度 |
鉄筋コンクリートの擁壁の伸縮目地の間隔が長い理由は、鉄筋がひび割れを細かく分散させ、ひび割れの幅を小さく抑えるためです。
対する無筋コンクリートの擁壁は、ひび割れを抑える鉄筋を持たないので、伸縮目地を短い間隔で設ける必要があります。
言葉の定義
この記事では、宅地造成や盛土の許可を受けて造る擁壁のことを、「宅地の擁壁」と呼びます。宅地の擁壁では、伸縮目地を擁壁の長さ20m以内ごとに1か所設けるのが原則です。この原則は、鉄筋コンクリート造・無筋コンクリート造・練積み造のどの擁壁にも当てはまります。道路擁壁とは基準が異なることに注意が必要です。
擁壁に伸縮目地が必要な理由
コンクリートは、固まるときに出る熱や気温による温度の変化、乾燥による縮みで、伸び縮みします。
長い擁壁を一続きに造ると、この伸び縮みが基礎や地盤に押さえられ、擁壁にひび割れの生じることがあります。
また、土圧などの外からの力による変形も、拘束幅が長いとひび割れの原因になります。
伸縮目地とは、擁壁を一定の長さで縦に切り離し、区間ごとの伸び縮みを妨げないための継ぎ目のことです。
伸縮目地を設けることで伸び縮みを押さえる力を小さくし、ひび割れを防ぐことができます。
そしてエラスタイトは、伸縮目地のすき間を埋める目地板です。エラスタイトはコンクリートが伸びて押されたときにクッションになることで、コンクリートを傷めないことを目的に設置されます。
擁壁で、間隔とは別に伸縮目地を設ける位置
擁壁の伸縮目地は、決まった間隔で割り付けるだけでなく、擁壁の動き方が異なる部分の境にも設けます。
理由は、動き方が異なる部分を一続きに造ると、境に力が集まり、ひび割れが生じやすくなるからです。
伸縮目地を入れる位置
・所定の間隔(宅地擁壁では20m以内)
・基礎地盤の条件が変化する所(例えば、切土と盛土の境)
・擁壁の高さが大きく異なる所
・擁壁の材料や構造が異なる所(例えば、鉄筋コンクリートの擁壁と練積みの擁壁の境)
宅地の擁壁では、これらの箇所に伸縮目地を設けるのが原則です。
擁壁の隅角部では、伸縮目地を角から離す
擁壁が曲がる所(隅角部)では、伸縮目地は、角を避けて、角から離した位置に設けます。
例えば宅地の擁壁では、隅角部から伸縮目地までの距離を、2.0mを超え、かつ擁壁の高さ程度と決められています。
隅角部から離す理由は、隅角部が、擁壁の中でも破壊の起きやすい部分だからです。
擁壁が土圧を受けると、外に張り出した角(出隅)は、角が開くように引っ張られ、角から割れることがあります。
そのため、隅角部では、角をはさむ二等辺三角形の部分を鉄筋とコンクリートで補強し、角の固さを増すのが原則です。
なお、宅地の擁壁では、二等辺三角形の一辺の長さを、擁壁の高さが3m以下なら50cm、3mを超えるなら60cmと決められています。
擁壁の伸縮目地の造り方
伸縮目地は、基礎まで切り離し、鉄筋も切り離す
伸縮目地は、壁だけでなく、基礎(底版)まで切り離して設けるのが原則です。
また、目地の位置では鉄筋も切り離します。
理由は壁だけを切り離しても、基礎や鉄筋がつながっていると、両側の区間は別々に動くことができず、伸縮目地の役目を果たさないからです。
伸縮目地の形は、ほぞと溝でかみ合わせる
伸縮目地の形は、一般に、目地の片側の出っ張り(ほぞ)と、もう片側のくぼみ(溝)をかみ合わせる構造となっています。
ほぞと溝がかみ合うことで、目地の両側がずれて段違いになることを防ぎます。
なお、擁壁の高さが低く、基礎地盤が堅固で、段違いが生じるおそれの無い場合は、ほぞと溝の無いまっすぐな伸縮目地も使われることがあります。
伸縮目地に挟む目地板(エラスタイトなど)
伸縮目地のすき間を埋める目地板(ジョイントフィラー)には、瀝青系や樹脂系の材料があります。
瀝青とは、アスファルトなどの、黒くて粘りのある材料のことです。
エラスタイトとは、瀝青系の目地板の製品名のことで、アスファルトを主な材料にした均一な板のことです。
エラスタイトは水を吸いにくく、酸やアルカリにも強いので、長い間、性質が変化しにくいのが特徴の材料です。
また、同じ瀝青系の目地板には、植物の繊維にアスファルト分を含ませた、押されたあとに元の厚さへ戻りやすい材料もあります。
目地板の厚さは、製品では10mmから100mm程度まで豊富です。
擁壁に使う目地板の種類と厚さは、設計図書の指定に合わせましょう。
擁壁の伸縮目地とひび割れ誘発目地の違い
伸縮目地を設けても、コンクリートの擁壁の表面には、ひび割れの生じることがあります。
ひび割れ誘発目地とは、壁の表面にV字の溝を設けて、そのようなひび割れをわざと溝の位置に集めるための目地のことです。
伸縮目地とは目的や構造が異なるため、混同しないように注意しましょう。
| 項目 | 伸縮目地 | ひび割れ誘発目地 |
|---|---|---|
| 目的 | 擁壁を区間に切り離し、区間ごとの伸び縮みを妨げない | 表面のひび割れを、決まった位置に集める |
| 目地の造り | 壁から基礎まで切り離す | 壁の表面にV字の溝を設ける |
| 鉄筋 | 目地の位置で切り離す | 切らずに通す |
| 間隔の目安 | 無筋コンクリートは10m以下、鉄筋コンクリートは15〜20m程度 | 壁の高さの1〜2倍程度 |
ひび割れ誘発目地は、擁壁を切り離す目地ではないので、溝の位置でも鉄筋は切らずに通します。
なお、ひび割れ誘発目地の間隔は、壁の高さの1〜2倍程度が目安です。
擁壁の伸縮目地を割り付ける手順
擁壁の伸縮目地は、隅角部などの位置が決められている箇所から先に置き、残りの区間を所定の間隔で割り付けると、効率良く配置することができます。
手順は以下のとおりです。
- 擁壁の全長と、隅角部の位置を図面で確かめる。
- 基礎地盤の条件が変化する所、擁壁の高さが大きく異なる所、擁壁の材料や構造が異なる所に、伸縮目地を配置する。
- 隅角部の近くでは、角から離した位置に伸縮目地を配置する。
- 残りの区間を、擁壁の構造に合った間隔に収まるように割り付ける。
- 伸縮目地の間に、ひび割れ誘発目地を、壁の高さの1〜2倍程度の間隔で入れる。
擁壁の伸縮目地に関するよくある疑問
擁壁の伸縮目地は、20mちょうどの間隔で入れればよいですか?
20mは、防災マニュアルに示されている伸縮目地の間隔の上限の値です。20mちょうどにそろえる必要はありません。
また、基礎地盤の条件が変化する所や隅角部では、所定の間隔とは別に伸縮目地の設置が必要です。
なお、設置間隔の上限を10mとしている行政もあるため、宅地擁壁の場合は行政の基準も確認するようにしましょう。
宅地の無筋コンクリートの擁壁も鉄筋コンクリートの擁壁と同様に考えていいですか?
宅地の擁壁では、無筋コンクリート造でも、伸縮目地を20m以内ごとに1か所設けるのが原則です。
ただし行政独自の基準を設けている場合もあるため、管轄の自治体の技術基準を確かめましょう。
長さが短い擁壁にも、伸縮目地は要りますか?
擁壁の全長が間隔の目安より短くても、基礎地盤の条件が変化する所や、擁壁の高さが大きく異なる変化点には、伸縮目地を設ける必要があります。
まとめ
以上。本記事では伸縮目地が必要な理由と、擁壁の構造ごとの間隔の目安について説明しました。
伸縮目地の間隔の目安は、無筋コンクリートの擁壁では10m以下、鉄筋コンクリートの擁壁では15〜20m程度です。
また、宅地の擁壁では、構造に関わらず伸縮目地を20m以内ごとに1か所設けるのが原則です。
なお、伸縮目地は、基礎地盤の条件が変化する所や、擁壁の高さ・材料・構造が異なる所にも設ける必要があります。
擁壁のひび割れを防ぐには、伸縮目地の間隔と位置の両方を確かめることが大切です。
参考にした基準・資料
- 公益社団法人 日本道路協会『道路土工-擁壁工指針(平成24年度版)』平成24年7月 Amazonで見る
- ぎょうせい『盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕』令和5年11月 第二次改訂版 Amazonで見る
- 岡部株式会社『ケンタイト・エラスタイト』製品カタログ
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