キャスポルと平板載荷試験の違い
キャスポルと平板載荷試験の違いをまとめると、次のとおりです。
| 比較項目 | キャスポル | 平板載荷試験 |
|---|---|---|
| 試験方法 | ランマーを地盤へ自由落下させる | 載荷板を介して地盤へ荷重を加える |
| 主な測定値 | 衝撃加速度から求めるインパクト値(Ia) | 荷重と沈下量 |
| 支持力の評価 | Iaからc・φなどを推定し算定 | 荷重-沈下関係から支持力特性を直接評価 |
| 評価方法 | 相関式を利用した間接評価 | 地盤への直接載荷 |
| 反力装置 | 不要 | 必要 |
| 試験時間 | 短い | 比較的長い |
| 多点測定 | しやすい | しにくい |
| 主な用途 | 施工管理、支持力の簡易確認、原位置試験の補完 | 基礎地盤の支持力特性・変形特性の確認 |
| 平板載荷試験の代用 | 原則として無条件にはできない | 基準に基づく原位置載荷試験 |
両方とも地盤の支持性能を確認するために使われますが、地盤を評価する仕組みがまったく異なります。
特に構造物基礎の地盤確認では、この違いを理解して使い分けることが重要です。
平板載荷試験は地盤の支持力を直接確認する試験
地盤の平板載荷試験は、地盤工学会基準JGS 1521「地盤の平板載荷試験方法」に基づいて行われます。
試験地盤面に剛な載荷板を設置し、載荷板を介して地盤へ段階的に荷重を加えます。
そのときの、
- 載荷圧力
- 沈下量
- 荷重と沈下量の関係
を測定し、地盤の支持特性や変形特性を評価します。
JGS 1521では、地盤の支持特性として極限支持力と地盤反力係数Kvが定義されています。
構造物基礎の施工では、設計で想定した地盤の支持性能が実際の基礎底面で確保されているかを確認する目的で平板載荷試験が行われることがあります。
そのため実務では、K値を求めること以上に、「この地盤で必要な支持力を確保できているか」を確認するために平板載荷試験を行うケースが多くあります。
平板載荷試験では荷重と沈下量の関係を見る
平板載荷試験の重要なポイントは、単に「何kN/m²まで載荷できたか」だけを見る試験ではないことです。
地盤へ荷重を加えながら沈下量を測定し、荷重-沈下曲線を確認します。
試験結果から、
- 荷重を増やしたときに沈下がどの程度増えるか
- 荷重と沈下量の関係がどこで変化するか
- 地盤が破壊に近づいていないか
- 必要な支持性能を確保しているか
などを判断します。
つまり平板載荷試験は、実際の地盤へ荷重をかけ、その地盤がどのように沈下するのかを見る試験です。
地盤に直接荷重を作用させるため、基礎地盤の支持力確認に使用しやすい試験といえます。
キャスポルは支持力を直接測定する試験ではない
キャスポルは、国土交通省近畿地方整備局近畿技術事務所が開発した簡易支持力測定器です。
キャスポルでは、
- ランマー質量:4.5kg
- ランマー落下高さ:45cm
という所定の条件でランマーを地盤へ自由落下させます。
ランマーが地盤へ衝突したときの衝撃加速度を測定し、インパクト値(Ia)へ変換します。
重要なのは、キャスポルが地盤の支持力を直接測定しているわけではないことです。
キャスポルが直接測定しているのは衝撃加速度です。
そのIa値と各種地盤定数との相関関係を利用して、
- 粘着力c
- せん断抵抗角φ
- CBR
- 地盤反力係数K30
- コーン指数qc
などを推定します。
構造物基礎の支持力を確認するときは、Ia値から推定したc・φなどを使って支持力を算定します。
したがって、キャスポルで表示・算定される支持力と、平板載荷試験によって確認する支持力特性では、そこに至るまでの考え方が異なります。
支持力の求め方がキャスポルと平板載荷試験の大きな違い
両者の違いを支持力の求め方から整理すると分かりやすくなります。
平板載荷試験
地盤へ実際に荷重を加えます。
その結果として得られる荷重と沈下量の関係から、地盤の支持力特性を評価します。
考え方を単純化すると、
地盤へ載荷 → 沈下量を測定 → 荷重-沈下関係から支持力特性を評価
となります。
キャスポル
地盤へランマーを落下させ、衝撃加速度を測定します。
そこからIa値を求め、Ia値との相関式によってc・φなどを推定します。
さらに、その地盤定数を使って支持力を算定します。
考え方を単純化すると、
ランマー落下 → 衝撃加速度 → Ia値 → c・φを推定 → 支持力を算定
となります。
したがって、同じ「支持力を確認する」という目的で使ったとしても、平板載荷試験は直接的な評価、キャスポルは相関式を介した間接的な評価という違いがあります。
キャスポルは平板載荷試験の代わりになる?
結論として、キャスポルを平板載荷試験と完全に同等の試験として扱うことはできません。
国土交通省近畿地方整備局の『簡易支持力測定器(キャスポル)利用手引き』では、キャスポルについて、従来の原位置試験の補完用として使用する簡易支持力測定器と位置づけています。
特に構造物基礎の支持力確認については、キャスポルのIa値と粘着力c、せん断抵抗角φには高い相関関係があるものの、測定結果にはある程度のばらつきがあるとされています。
そのため、地盤の平板載荷試験(JGS 1521)の補完用試験として使用することが推奨されています。
したがって、
「キャスポルで必要な支持力が出たから平板載荷試験は不要」
と一律に判断するのは適切ではありません。
設計図書や施工管理基準で平板載荷試験が求められている場合は、原則として指定された試験を行う必要があります。
キャスポルが補完用とされる理由
キャスポルの支持力評価には、Ia値と地盤定数との相関式が使われます。
しかし、実際の地盤は現場ごとに異なります。
たとえば、
- 粒度組成
- 礫分含有率
- 細粒分含有率
- 土質
- 密度
- 含水状態
などによって測定結果が変化します。
キャスポルの利用手引きでも、礫質土から粘性土までをひとつの相関式で表すことには限界があり、地盤材料の違いによって測定値にばらつきが生じることが示されています。
特に、相関式を作成した地盤材料と実際の現場地盤の粒度組成などが大きく異なる場合は、推定結果にも差が生じます。
そのためキャスポルでは、表示された数値だけを見るのではなく、対象地盤の土質を確認したうえで結果を評価することが重要です。
平板載荷試験にも評価できる深さに限界がある
平板載荷試験は地盤へ直接荷重を加えるため、支持力確認には有効な試験です。
ただし、平板載荷試験にも注意点があります。
代表的なのが、載荷板によって影響を受ける地盤の範囲には限界があることです。
平板載荷試験では実際の基礎よりも小さな載荷板を使用することが一般的です。
そのため、載荷板直下の比較的浅い地盤の状態は確認できますが、それより深い位置に存在する軟弱層の影響を十分に確認できないことがあります。
たとえば、
- 表層1mは締まった砂質土
- その下に軟弱な粘性土が厚く分布
しているような地盤では、表層で平板載荷試験の結果が良好でも、実際の構造物では下部軟弱層の影響によって沈下する可能性があります。
したがって、平板載荷試験の結果だけで地盤全体を判断するのではなく、ボーリング調査などで地層構成を確認することが重要です。
キャスポルのメリットは簡単に多点測定できること
キャスポルの大きなメリットは、測定の簡便さです。
平板載荷試験では、
- 載荷板
- 油圧ジャッキ
- 反力装置
- 変位測定装置
などが必要になります。
反力としてバックホウや重機などを使用する場合もあり、試験準備にも時間がかかります。
一方、キャスポルは小型の測定器を使用し、ランマーを落下させるだけで測定できます。
そのため、
- 反力装置が不要
- 試験時間が短い
- 多数の地点を測定しやすい
- 狭い場所でも測定しやすい
- 測定結果をその場で確認できる
といったメリットがあります。
特に広い基礎地盤や地盤改良範囲では、数か所だけを測定するよりも、多数の地点を確認した方が地盤のばらつきを把握しやすくなります。
このような場面では、キャスポルの機動性を活かせます。
平板載荷試験のメリットは地盤へ直接荷重をかけられること
平板載荷試験の最大の特徴は、実際の地盤へ荷重を加えて支持力特性を確認できることです。
構造物基礎では、完成後に上部構造物の荷重が基礎を介して地盤へ作用します。
平板載荷試験は、この状態を小さな載荷板で再現し、地盤が荷重に対してどのように沈下するかを確認します。
そのため、
- 基礎底面の支持力確認
- 地盤改良後の支持性能確認
- 設計で想定した支持地盤の確認
などに適しています。
一方で、試験設備が大きく、多数の地点を測定するには時間や費用がかかります。
支持力を直接的に確認するなら平板載荷試験、広い範囲を簡便に確認するならキャスポルという違いを理解すると使い分けやすくなります。
キャスポルと平板載荷試験を併用する方法もある
実務では、キャスポルと平板載荷試験のどちらか一方だけを使うのではなく、両者を組み合わせる方法も有効です。
たとえば地盤改良後の支持力確認であれば、
- 代表地点で平板載荷試験を行う
- 同じ地盤でキャスポルを測定する
- 平板載荷試験とキャスポルの結果を比較する
- キャスポルで多数の地点を測定する
- 測定値のばらつきや異常箇所を確認する
といった方法が考えられます。
平板載荷試験によって代表地点の支持性能を直接確認し、キャスポルによって面的なばらつきを確認する考え方です。
キャスポルは短時間で多点測定できるため、平板載荷試験だけでは確認しにくい施工範囲全体の均一性を見る補完試験として利用できます。
ただし、具体的な試験頻度や判定基準については、適用する設計・施工基準や発注者との協議によって決める必要があります。
地盤改良後の確認では両試験の特徴を理解する
浅層改良などの地盤改良後に支持力を確認するときも、キャスポルと平板載荷試験が使用されることがあります。
このときに注意したいのが、どちらも測定した位置付近の地盤状態を評価しているという点です。
地盤改良では、
- 固化材の添加量
- 原地盤との混合状態
- 含水状態
- 改良深さ
- 改良厚
- 養生期間
などによって改良体の品質が変化します。
そのため、1地点の試験結果だけが良好でも、改良範囲全体の品質が同じとは限りません。
平板載荷試験で代表地点の支持性能を確認し、キャスポルで多数の地点を確認すれば、施工範囲のばらつきを把握しやすくなります。
ただし、キャスポルの測定結果だけから改良体内部の強度や深部までの品質を確認できるわけではありません。
地盤改良の品質確認では、必要に応じて一軸圧縮試験などの品質管理試験と組み合わせて評価することが重要です。
キャスポルで支持力を確認するときの注意点
キャスポルは簡便な測定器ですが、どのような地盤でも同じように使用できるわけではありません。
土質を確認する
キャスポルはIa値と地盤定数との相関式を利用します。
そのため、対象地盤の粒度や土質が相関式を作成した地盤と大きく異なると、推定値に差が生じる可能性があります。
測定前に対象地盤の土質を確認することが重要です。
礫の影響に注意する
ランマーが大きな礫に直接当たると、地盤全体の状態とは関係なく大きな衝撃加速度が測定される可能性があります。
礫が多い地盤では、測定位置を変えたり複数回測定したりして、測定値のばらつきを確認する必要があります。
1点だけで判断しない
キャスポルのメリットは多点測定できることです。
1点だけ測定して支持力を判断するよりも、複数地点を測定して、
- 平均値
- 最小値
- ばらつき
- 他の地点より著しく低い場所
などを確認する使い方が適しています。
「支持力をどのような方法で確認しているか」
という違いを見る方が実務上は重要です。
キャスポルと平板載荷試験の使い分け
キャスポルと平板載荷試験は、次のように使い分けると整理しやすくなります。
基礎地盤の支持力を直接確認したい
平板載荷試験を検討します。
特に設計図書や施工管理基準で平板載荷試験が指定されている場合は、指定された方法で試験を行います。
短時間で多数の地点を確認したい
キャスポルが適しています。
広い基礎地盤や地盤改良範囲などで、地盤状態のばらつきを確認するときに使いやすい測定器です。
平板載荷試験を補完したい
キャスポルを併用できます。
代表地点では平板載荷試験を行い、その他の地点をキャスポルで測定することで、平板載荷試験だけでは確認しにくい面的なばらつきを把握できます。
平板載荷試験をキャスポルに変更したい
自己判断で変更しないようにしましょう。
キャスポルの利用手引きでも、キャスポルは平板載荷試験の補完用として使用することが推奨されています。
キャスポルのみで支持力確認を行う場合は、発注者などの関係機関との協議が必要です。
キャスポルと平板載荷試験に関するよくある疑問
キャスポルと平板載荷試験は同じ試験ですか?
同じ試験ではありません。
平板載荷試験は、地盤へ載荷板を介して直接荷重を加え、荷重と沈下量の関係から支持力特性を評価します。
キャスポルは、ランマー落下時の衝撃加速度からIa値を求め、相関式によって地盤定数や支持力を推定します。
キャスポルで支持力は分かりますか?
キャスポルから支持力を推定することは可能です。
ただし、支持力を直接測定しているわけではありません。
Ia値から粘着力cやせん断抵抗角φなどを推定し、それらを利用して支持力を算定します。
平板載荷試験では何を確認しますか?
地盤へ直接荷重を加え、その荷重と沈下量の関係から地盤の支持特性や変形特性を確認します。
構造物基礎では、設計で必要となる支持性能が実際の基礎地盤で確保されているかを確認する目的で使用されます。
キャスポルで平板載荷試験を代用できますか?
無条件に代用できるとは考えない方がよいでしょう。
キャスポルの利用手引きでも、地盤の平板載荷試験の補完用として使用することが推奨されています。
設計図書などで平板載荷試験が指定されている場合は、発注者などの関係機関と協議せずにキャスポルへ変更しないようにしましょう。
キャスポルと平板載荷試験はどちらが正確ですか?
単純に精度だけで比較する試験ではありません。
平板載荷試験は実際に地盤へ荷重を加えるため、試験位置の支持力特性を直接評価できます。
一方、キャスポルは相関式による推定ですが、短時間で多数の地点を測定できます。
支持力の直接確認を重視するなら平板載荷試験、施工範囲のばらつき確認を重視するならキャスポルというように、目的によって使い分けます。
まとめ|支持力は平板載荷試験で直接確認し、キャスポルは補完的に使う
キャスポルと平板載荷試験の大きな違いは、支持力特性を直接確認するか、相関式を使って間接的に推定するかです。
平板載荷試験では、載荷板を介して地盤へ実際に荷重を加え、荷重と沈下量の関係から地盤の支持力特性を評価します。
一方、キャスポルではランマー落下時の衝撃加速度からIa値を求め、Ia値との相関関係からc・φなどの地盤定数を推定して支持力を算定します。
そのため、
平板載荷試験=支持力特性を直接確認する試験
キャスポル=支持力を簡便に推定する試験
と考えると違いが分かりやすくなります。
キャスポルは反力装置が不要で、多数の地点を短時間で確認できるというメリットがあります。
一方で、相関式を利用するため土質条件によるばらつきがあり、平板載荷試験と完全に同等の試験ではありません。
構造物基礎の支持力確認では、平板載荷試験をキャスポルで置き換えるのではなく、平板載荷試験をキャスポルで補完するという考え方が基本です。
試験方法を選ぶときは、求めたい数値だけではなく、試験の目的、地盤条件、設計図書、施工管理基準を確認したうえで適切に使い分けましょう。