ボーリング調査の目的は地中の状態を設計に使える情報へ変えること
ボーリング調査は、基本的かつ汎用的な地質調査のひとつです。
全国地質調査業協会連合会の「ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領(案)・同解説」では、ボーリング調査について、土木構造物の設計・施工・維持管理や、地すべりなどの災害調査で重要な調査とされています。
重要なのは、ボーリング調査=孔を掘る作業だけではないことです。
調査目的に応じて、次のような調査や試験を組み合わせます。
- ボーリングによる地盤の削孔
- 土や岩などの試料採取
- ボーリングコアの観察
- 標準貫入試験などの原位置試験
- 採取した試料による室内土質試験
- 孔内水位の測定
- 必要に応じた検層や地下水調査
これらの結果を深度ごとに整理した代表的な成果が「ボーリング柱状図」です。
つまり、ボーリング調査の最終的な目的は、目に見えない地中の状態を把握し、設計や施工で判断できる情報へ変換することだと考えるとわかりやすいでしょう。
ボーリング調査でわかる5つのこと
ボーリング調査では、目的に応じてさまざまな地盤情報を確認します。
代表的なものは次の5つです。
1. 地層構成や土質・岩質
最も基本的な目的が、地中にどのような地層が分布しているかを確認することです。
ボーリングによって採取した試料やコアを観察すると、
- 盛土
- 粘性土
- 砂質土
- 礫質土
- 岩盤
などが、どの深度に分布しているかを確認できます。
土質ボーリング柱状図には、現場土質名や地盤材料の工学的分類、色調などが深度ごとに整理されます。
たとえば、地表付近には盛土、その下に軟らかい粘性土、さらに深部に締まった砂礫層があるといった地層構成を把握できます。
地層構成は、基礎形式や地盤改良の必要性などを検討するうえで重要な情報です。
2. 地盤の硬さや締まり具合
土質ボーリングでは、標準貫入試験を併用するケースがあります。
標準貫入試験によって得られる代表的な値が「N値」です。
柱状図では、N値と深度の関係に加えて、砂質土などの相対密度や粘性土などの相対稠度といった工学的な性状も整理されます。
そのため、
- 軟らかい地盤がどこまで続いているか
- 深くなるにつれて地盤が締まっているか
- 基礎を支持させる地盤をどの深度で検討するか
といった判断材料になります。
ただし、N値だけを見れば地盤のすべてがわかるわけではありません。
土質や地層構成、地下水、室内試験結果などと組み合わせて評価することが重要です。
3. 土や岩の試料を採取できる
ボーリング調査の大きな特徴は、地中から実際の土や岩を採取できることです。
全長にわたってボーリングコアを採取する方法は「オールコアボーリング」と呼ばれます。
採取した試料は肉眼観察だけでなく、必要に応じて室内試験にも利用できます。
室内試験を組み合わせれば、調査目的に応じて、
- 土の物理的な性質
- 強度に関する性質
- 圧縮や変形に関する性質
- 透水に関する性質
などを検討するためのデータを得られます。
設計計算で必要となる地盤定数を検討する場合、ボーリングで地層を確認したうえで、必要な深度から適切な試料を採取することが重要になります。
4. 地下水の状態
ボーリング孔では、孔内水位も測定します。
地下水は、地盤や構造物の安定性を検討するうえで重要な条件です。
たとえば、
- 掘削時の湧水
- 斜面や盛土の安定
- 地下構造物
- 地すべり
- 地下水排除工
などを検討する場合、地下水の情報が重要になります。
地すべり調査では、ボーリング掘進中の水位変動を整理し、地下水検層などの結果と組み合わせて水理地質構造を把握することもあります。
なお、ボーリング中に確認した孔内水位だけを、単純に自然地下水位と判断できるとは限りません。
地下水が重要な設計条件になる場合には、調査目的に応じた観測方法を選ぶ必要があります。
5. 設計・施工で必要な地盤条件
ボーリング調査で得られた情報は、調査すること自体が目的ではありません。
最終的には、設計や施工の判断に利用します。
たとえば構造物基礎であれば、
- どのような地層が分布しているか
- 軟弱な地盤が存在するか
- 支持させる地盤をどこに設定するか
- 地盤改良が必要か
- 地下水をどのように考慮するか
といった検討につながります。
盛土や斜面であれば、地層構成や地下水、必要な土質試験結果などをもとに、安定性を検討します。
ボーリング調査は、設計条件を決めるための基礎資料をつくる調査と考えると、その目的を理解しやすくなります。
ボーリング調査の目的は対象によって変わる
ボーリング調査は、すべての現場で同じ内容を調べるわけではありません。
「ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領(案)・同解説」では、柱状図の標題欄に「調査目的」と「調査対象」を記載することになっています。
調査目的には道路、鉄道、河川、建築、土地造成、ダムなどがあり、調査対象には次のようなものがあります。
| 調査対象 | 主な確認内容の例 |
|---|---|
| 構造物基礎 | 地層構成、地盤の硬さ、基礎地盤の状態 |
| 橋梁・高架 | 基礎周辺の地盤構成や工学的性状 |
| 盛土・盛土のり面 | 基礎地盤、軟弱層、地下水など |
| 掘削・掘削のり面 | 地質構成、地盤の性状、地下水 |
| 地すべり・斜面崩壊 | 地質構造、すべりに関係する地層、地下水 |
| 地盤沈下 | 軟弱層などの地盤構成 |
| 地震・耐震 | 地層構成や地盤条件 |
| 水資源調査 | 地下水や水理地質構造 |
同じボーリング調査でも、構造物基礎を設計する場合と、地すべりを調査する場合では必要な情報が異なります。
そのため、最初に調査目的を明確にし、その目的を達成するために必要な試験を組み合わせることが重要です。
ボーリング調査と標準貫入試験は同じものではない
ボーリング調査を調べていると、「ボーリング調査」と「標準貫入試験」が同じ意味のように説明されることがあります。
厳密には同じものではありません。
ボーリングは、機械を使って地盤に孔を削孔することです。
一方、標準貫入試験は、ボーリング孔を利用して行う原位置試験のひとつです。
土質ボーリング柱状図の標準様式でも、
- 現場土質名
- 地盤材料の工学的分類
- 色調
- 相対密度・相対稠度
- 孔内水位
- 標準貫入試験
- その他の試験
がそれぞれ別の情報として整理されています。
つまり、
ボーリングで孔を掘り、地層を確認しながら、標準貫入試験などを組み合わせて地盤の性質を調べる
という関係です。
「ボーリング調査=N値を測るだけ」と考えないようにしましょう。
ボーリング柱状図は調査結果を深度方向に整理したもの
ボーリング調査が終わると、調査結果は一般的にボーリング柱状図として整理されます。
ボーリング柱状図とは、ボーリング調査や試験、検層によって明らかになった情報を、深度順にまとめて図示したものです。
土質ボーリング柱状図では、主に次のような情報を確認できます。
- 標高・深度
- 現場土質名
- 地盤材料の工学的分類
- 色調
- 相対密度・相対稠度
- 孔内水位
- N値
- 原位置試験結果
- 室内試験結果
- 削孔時の状況
設計では、N値だけを見るのではなく、これらの情報を縦方向に読みながら地盤モデルを考えていきます。
たとえばN値が同じでも、砂質土と粘性土では地盤としての性質が異なります。
柱状図を読むときは、土質・深度・N値・地下水・試験結果をセットで確認することが大切です。
ボーリング調査の目的を決めてから調査方法を選ぶ
ボーリング調査では、「とりあえず孔を掘ればよい」という考え方は適切ではありません。
重要なのは、
- 何を設計・検討するのか
- どの地盤情報が必要なのか
- どの調査・試験で確認するのか
という順番です。
たとえば、地層構成とN値を確認することが目的なのか、室内試験用の乱れの少ない試料が必要なのか、地下水の流れまで把握したいのかによって、調査内容は変わります。
調査目的が明確でなければ、必要なデータが不足する一方で、設計に使用しない試験まで実施してしまう可能性があります。
ボーリング調査は、設計で必要な情報から逆算して計画することが重要です。
計算ツールを使う場合もボーリング調査結果が入力条件の根拠になる
擁壁や基礎、盛土などの安定計算では、地盤条件を入力して計算を行います。
しかし、計算式が正しくても、入力した地盤条件が実際の地盤と大きく異なれば、計算結果の意味も変わってしまいます。
ボーリング調査や土質試験は、
- どの地層を計算対象にするか
- 地下水をどの位置に設定するか
- どの試験結果を設計条件として採用するか
といった判断の根拠になります。
計算ツールを利用する場合も、数値を入力することだけが目的ではありません。
「なぜその地盤条件を入力するのか」をボーリング柱状図や試験結果から説明できることが重要です。
ボーリング調査の目的に関するよくある質問
ボーリング調査ではN値だけを調べるのですか?
N値だけではありません。
地層構成、土質・岩質、孔内水位、標準貫入試験、その他の原位置試験や室内試験などを、調査目的に応じて組み合わせます。
N値はボーリング調査から得られる情報のひとつです。
ボーリング調査で地下水位もわかりますか?
ボーリング孔内の水位を測定できます。
ただし、孔内水位には削孔条件などが影響する場合があります。地下水が重要な設計条件になる場合は、経時的な観測や地下水検層など、目的に適した方法を組み合わせて評価します。
ボーリング調査とオールコアボーリングの違いは何ですか?
オールコアボーリングは、ボーリング全長にわたってコアを採取する方法です。
地層や岩盤の状態を連続的に観察したい場合などに利用されます。
一方、標準貫入試験を主体とした土質ボーリングでは、標準貫入試験の結果などを柱状図に整理します。
どちらを選ぶかは調査目的によって異なります。
まとめ|ボーリング調査の目的は設計に必要な地盤情報を得ること
ボーリング調査の目的は、単に地面に孔を掘ることではありません。
地中の地質・土質・工学的性状・地下水などを把握し、構造物の設計や施工に必要な情報を得ることが目的です。
ボーリング調査では、主に次の情報を確認します。
- 地層構成や土質・岩質
- N値などの地盤の工学的性状
- 土や岩の試料
- 地下水の状態
- 原位置試験・室内試験の結果
これらをボーリング柱状図として整理し、基礎、盛土、擁壁、斜面などの設計条件を設定するために利用します。
特に重要なのは、N値などひとつの数値だけで地盤を判断しないことです。
土質、地層構成、地下水、原位置試験、室内試験などを総合的に確認することで、ボーリング調査の結果を適切に設計へ反映できます。