待ち受け擁壁の設計計算|崩壊土砂の衝撃力・土砂捕捉容量の検討

v2.0.2 最終更新日: 2026-09-30

インストール不要で使える無料の待ち受け擁壁設計計算用フリーソフトです。斜面から離して設置し、崩壊した土砂を受け止める待ち受け擁壁を対象に、崩壊土砂量と土砂捕捉容量の検討、崩壊土による移動の力・衝撃力の算定を行い、常時・衝撃時・堆積時の3つの荷重状態について転倒・滑動を照査し、地盤反力度を求めます。あわせて躯体の断面計算と落石防護柵の設計を行います。

このツールで検討できること
  • 崩壊土砂の衝撃力と堆積土圧を考慮して、常時・衝撃時・堆積時の3状態について安定計算を行います。
  • 土砂捕捉容量を算定し、必要な擁壁高と設置位置の検討に使えます。
対象外・注意が必要な条件
  • 崩壊土砂量は、現地の調査などで推定した値を直接入力するか、斜面崩壊実績の統計値(斜面高さ区分による)から求めます。統計値の表は斜面高5m以上の区分です。
  • 地震時の照査は行いません(擁壁高が8mを超える場合は地震時の照査が必要です)。底版を持たない台形断面の重力式(無筋コンクリート)が対象です。
  • 背面土は単一土層・水位なしとして扱います。支持力の照査は別途、直接基礎の地耐力計算に連動して実施します。

適用範囲と計算上の仮定をすべて見る

1. 躯体形状

擁壁の全高(底面から天端まで)です。重力式擁壁は底版を持たず、躯体そのものが底面で直接地盤に接します。擁壁高が8mを超えるときは地震時の照査も必要ですが、このツールは扱いません。

天端後端から底面後端までの水平方向のずれです。基礎幅Bは天端幅T1とT2・T3の合計として自動的に算出されます。

2. 地形条件

待ち受ける斜面の高さです。崩壊土砂量を表から求めるときは、この高さに応じて全国の斜面災害データによる崩壊土量Vと崩壊幅Wが決まります。表は斜面高5m以上の区分で、5m未満は表の範囲外です(最小区分の値を使います)。

斜面の傾斜度です。移動の力Fsmの算定と、土砂捕捉容量の断面形状に用います。

斜面下端から擁壁までの平坦部の傾斜度です。建築物は通常敷地を平坦に造成するため、原則として0としてください。

斜面の下端から擁壁背面までの水平距離です。この空きが崩壊土砂を受け止める空間になります。値が大きいほど捕捉容量が増え、衝撃力は小さくなります。

擁壁天端と地表面(斜面下端のレベル)の高低差です。土圧を受ける仮想背面の高さは「擁壁高 H − 空き高さ Z」となります。

擁壁天端に落石防護柵を設置するかどうかです。設置する場合、その高さが崩壊土砂を受け止められる空き高さ hs に算入され、堆積した土砂による土圧に対して防護柵の照査も行います。設置しない場合、空き高さは擁壁の空き高さ Z のみとなります。

擁壁天端に設置する落石防護柵の高さです。堆積高さの上限(空き高さ hs = Z + Hsg)に算入されます。

3. 崩壊土砂

現地の調査などで崩壊土砂量を推定できる場合は、その値を直接入力してください。推定が困難な場合は、全国の斜面災害データによる斜面高さごとの崩壊土量(累積度数90%となる値)と崩壊幅から求めることができます。

延長1mあたりの崩壊土砂量(崩壊断面積)です。土砂捕捉容量と堆積高さの照査に用います。

崩壊に伴う土石等が移動する層の高さで、想定する崩壊深の1/2とします。既定値の1.0mは、最大崩壊深を2.0mとしたときの値です(土砂災害防止法の基礎調査での標準的な値)。衝撃力は FH = α・Fsm・hsm で、地盤面から hsm の範囲に作用するものとします。

移動の力Fsmの算定に用いる流体抵抗係数です(国土交通省告示第332号の式。基礎調査で用いられる値は0.025)。

待ち受け擁壁における衝撃力の緩和係数です。擁壁に作用する衝撃力は F = α・Fsm となります。

堆積した土石等の単位体積重量です。堆積土砂による土圧の算定と、堆積時に裏込め土の上に載せる換算荷重(q = hd・γd)に用います。

移動の力Fsmの算定に用いる、移動する土石等の内部摩擦角です。値が大きいほどFsmは小さくなります。地質調査で決めるのが基本で、得られない場合は所管の設定値を用いてください。既定値の30°は、崩壊土砂の衝撃力を考慮した待受け擁壁の計算例で用いられている値です。

堆積した土石等の内部摩擦角です。堆積土砂による土圧(擁壁の空き部分と防護柵)の算定に用い、壁面摩擦角はその2/3とします。地質調査で決めるのが基本で、得られない場合は所管の設定値を用いてください。

4. 背面土砂・材料

斜面上端より先の平坦部に載る上載荷重です。常時のみ考慮し、衝撃時・堆積時は考慮しません。

滑動抵抗は ΣV・μ + CB・B′ として算定します(B′ = B − 2e は荷重の偏心を考えた有効幅)。

5. 許容安全率

滑動に対する許容安全率です。既定値は常時1.5・衝撃時1.0・堆積時1.2です。転倒は合力の偏心量で照査します(常時 |e| ≦ B/6、衝撃時・堆積時 |e| ≦ B/3)。

6. 許容応力度

躯体の無筋コンクリートの設計基準強度です。入力すると、許容圧縮応力度 σca と許容せん断応力度 τa を自動入力します。

無筋コンクリートの許容圧縮応力度です(道路土工-擁壁工指針 表4-6: σck/4 かつ5.5以下。σck=18で4.50)。衝撃時・堆積時は1.5倍した値を自動入力します。

無筋コンクリートの許容曲げ引張応力度です(擁壁工指針 表4-6: σtk/7 かつ0.3以下。σtkはコンクリートの設計基準引張強度)。既定値の0.30はこの上限の値で、σtkから求めた値ではありません。σtkが分かる場合はσtk/7と0.3の小さい方を入力してください。衝撃時・堆積時は1.5倍します。

無筋コンクリートの許容せん断応力度です(擁壁工指針の無筋コンクリートの解説: τa = σck/100 + 0.15 以下。σck=18で0.33)。この値は衝撃時・堆積時にも割増しを行いません。

7. 防護柵

リアルタイムプレビュー

入力に応じて自動更新

断面図

計算方法と適用範囲

このツールで計算できること

待ち受け擁壁(斜面から離して設置し、崩壊した土砂を受け止める重力式擁壁。延長1mあたり)について、常時・衝撃時(崩壊土砂の衝撃力)・堆積時(堆積土砂の土圧)の3つの荷重状態の安定計算・躯体の応力度照査と、土砂捕捉容量の検討を行います。落石防護柵を天端に設置する場合は、防護柵(支柱・ワイヤーロープ・支柱のつけ根部)の設計もあわせて行います。

計算方法・使用式

  • 崩壊土砂による移動の力: 国土交通省告示第332号の式(土砂災害防止法の基礎調査で用いる式)により、斜面上の各地点で移動の力Fsmを求め、その最大値を採用します。衝撃力は移動の力に緩和係数αを乗じて求め、地盤面から移動の高さhsmの範囲に作用させます(作用位置は地盤面からhsm/2)。
  • 荷重状態: 常時(自重+背面土砂の土圧+上載荷重)、衝撃時(自重+背面土砂の土圧+衝撃力。上載荷重は考慮しない)、堆積時(自重+背面土砂の土圧+堆積した崩壊土砂による土圧)の3ケースを照査します。堆積時は、堆積した崩壊土砂を換算荷重として背面土砂の上に載せます。
  • 安定計算: 各荷重状態について、転倒(合力の偏心量。常時は |e| ≦ B/6、衝撃時・堆積時は |e| ≦ B/3)と滑動の安全率を照査し、地盤反力度を求めます。背面土砂の土圧は試行くさび法、堆積土砂の土圧は堆積面を水平としたクーロン土圧(試行くさび法で同じ値になります)によります。
  • 躯体の照査: 無筋コンクリートの台形断面(基礎幅B = T1+T2+T3)について、天端から底面までの水平断面で縁応力度(圧縮・引張)・せん断応力度を求め、最も大きい値を荷重状態ごとの許容応力度と比較します。
  • 土砂捕捉容量: 崩壊土砂量(現地の調査などによる推定値、または全国の斜面崩壊実績による斜面高さごとの崩壊土量・崩壊幅から求めた値)について、捕捉容量 Vh ≧ 崩壊土砂量 v と、堆積高さ hd ≦ 擁壁天端+防護柵の高さ hs を照査します。
  • 防護柵: 堆積時に擁壁天端より上の堆積土砂の土圧を受けるものとして、支柱の曲げ・せん断、ワイヤーロープの張力、支柱のつけ根部のコンクリートの応力度を照査します。

入力と出力

入力: 躯体形状(擁壁高・天端幅・前面/背面バッター)、地形条件(斜面高・斜面勾配・下端の平坦部の勾配・擁壁までの距離・空き高さ・防護柵の有無と高さ)、崩壊土砂の条件(崩壊土砂量の決め方・移動の高さhsm・密度ρm・係数など)、堆積土砂・背面土砂の土質条件、滑動の許容安全率・許容応力度(荷重状態ごと)、防護柵の諸元(支柱間隔・断面性能・ワイヤーロープ)。

出力: 常時・衝撃時・堆積時それぞれの転倒・滑動と躯体応力度照査のOK/NG判定と地盤反力度、崩壊土砂量と捕捉容量・堆積高さの照査結果、防護柵の応力度照査。計算過程つきの帳票(計算書)を出力できます。

適用範囲・計算上の仮定

  • 延長1mあたりの2次元断面として計算します(土砂捕捉容量は崩壊幅を考慮)。
  • 底版を持たない台形断面の重力式(無筋コンクリート)擁壁が対象です。
  • 崩壊土砂量は、現地の調査などで推定できる場合はその値を入力し、推定が困難な場合は斜面崩壊実績の統計値(斜面高さ区分による)を用います。統計値の表は斜面高5m以上の区分で、5m未満の低い斜面で考える崩積土の堆積土圧や表土のすべり土圧は扱いません。
  • 地震時の照査は行いません(常時・衝撃時・堆積時の3状態です)。擁壁高が8mを超える場合は、地震時の照査を別途行ってください。
  • 背面土は単一土層・水位なしとし、地下水位・水圧は考慮しません。
  • 支持力の照査は地盤反力度の算出までです。許容支持力度との比較は別途行ってください(衝撃時・堆積時は許容支持力度を1.5倍して比べてよいため、1.5で割った値も示します)。

使用基準・参考文献・設計者が確認すべき事項

待ち受け擁壁を対象とした技術基準(指針・示方書)はありません。設計の考え方・荷重状態・照査項目は、次の文献を参考にしています。

  • 崩壊土砂による衝撃力と崩壊土砂量を考慮した待受け擁壁の設計計算事例(平成16年6月、全国地すべりがけ崩れ対策協議会)
  • 新・斜面崩壊防止工事の設計と実例-急傾斜地崩壊防止工事技術指針-(全国治水砂防協会)
  • 国土技術政策総合研究所資料No.261「簡易貫入試験を用いた崩壊の恐れのある層厚推定に関する研究」(平成17年6月、国土交通省国土技術政策総合研究所)の参考資料
  • 国土交通省告示第332号(平成13年3月28日): 崩壊土砂による移動の力Fsmの算定式。
  • 道路土工-擁壁工指針(平成24年7月、日本道路協会): 無筋コンクリートの許容応力度。 Amazonで見る

衝撃力の係数α・崩壊土砂の密度・移動高さ・堆積土砂の土質定数は想定する崩壊形態により大きく変わります。急傾斜地崩壊対策や土砂災害特別警戒区域での開発などでは所管の基準・運用が優先されるため、適用条件と採用値の妥当性を設計者が別途確認してください。

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