結論:qu=12.5Nは粘性土の概略値なら使える。N値5未満と砂質土には使えない
qu = 12.5N(quの単位はkN/m2)は、粘性土の一軸圧縮強さをN値から見積もる式です。使ってよい場面と、使ってはいけない場面は次のとおりです。
| 条件 | 使えるか | 理由 |
|---|---|---|
| 粘性土・N値5以上・概略検討 | 使える | 想定されている適用範囲の中にある |
| 粘性土・N値5未満 | 使えない | 標準貫入試験の打撃エネルギーが大きすぎて強度を捉えられない |
| 砂質土・礫質土 | 使えない | 一軸圧縮強さは自立する試料でないと測定できず、粘性土の指標である |
| 砂れき・玉石を含む地層 | 使えない | N値が過大に出るため、換算した値も過大になる |
| 本設計・詳細検討 | 原則使わない | 乱れの少ない試料による室内試験で求める |
まとめると、N値からの換算は「試験に回すべきかどうか、当たりをつけるための手段」です。線引きの根拠を、記事の後半で順に説明します。
12.5という係数はTerzaghi・Peckの区分表を直線にしたもの
qu = 12.5N の12.5は、理論から導かれた定数ではありません。N値と粘土のコンシステンシーの対応表を、直線で近似したときの傾きです。
もとの対応表は幅を持った区分で与えられている
N値と粘土のコンシステンシー、一軸圧縮強さの対応は、道路土工-土質調査指針の 6-3 標準貫入試験に、表6-3と図6-3で示されています。Terzaghi・Peckによるもので、次のように区分されています。
| N値 | コンシステンシー | qu (kgf/cm2) | quの換算値 (kN/m2) |
|---|---|---|---|
| 2以下 | 非常にやわらかい | 0.25以下 | 25以下 |
| 2〜4 | やわらかい | 0.25〜0.5 | 25〜50 |
| 4〜8 | 中位の | 0.5〜1.0 | 50〜100 |
| 8〜15 | かたい | 1.0〜2.0 | 100〜200 |
| 15〜30 | 非常にかたい | 2.0〜4.0 | 200〜400 |
| 30以上 | 固結した | 4.0以上 | 400以上 |
もとの対応が幅を持った区分である点に注意してください。N値10に対してquが一意に決まるわけではなく、100〜200 kN/m2 の範囲に入るという情報しか与えられていません。
区分の下限を結ぶと qu = N/8 (kgf/cm2) になる
表の区分の下限は、N値2でqu = 0.25、N値4で0.5、N値8で1.0 と、N値に比例して並んでいます。傾きは1/8で、qu = N/8 (kgf/cm2) という覚えやすい形になります。指針の表がkgf/cm2で書かれているのは、昭和61年11月の改訂版だからです。
1 kgf/cm2 を 100 kN/m2 と丸めると、100 ÷ 8 = 12.5 になります。qu = 12.5N (kN/m2) の12.5は、この単位換算から出た数字です。
厳密には 1 kgf/cm2 = 98.1 kN/m2 なので、換算すると12.3です。12.5は切りのよい数字に寄せた値になります。またN値15以上の区分(2.0、4.0 kgf/cm2)では傾きが1/7.5になるため、比例関係も表の全域では成り立ちません。
つまり qu = 12.5N は、幅のある区分表を1本の直線に置き換えたものです。区分の中央値ではなく下限を通る直線なので、実際のquは同じN値でも上下に倍近く振れます。
c = qu/2 は非排水条件(φ = 0)での粘着力
一軸圧縮強さが求まると、粘着力cは c = qu/2 で得られます。飽和した粘性土を非排水条件(φ = 0)で扱うときの関係で、土質調査指針の図6-3にも c = qu/2 として書き添えられています。
道路橋示方書Ⅳ下部構造編 4.2の解説は、軟らかい粘性土の非排水せん断強度について述べています。乱れの少ない試料による一軸圧縮試験から qu を求め、qu/2 としてよい、という記述です。ここで前提になっているのは、あくまで一軸圧縮試験で測ったquです。
N値から換算したquをそのまま代入することを認めた記述ではありません。
同じ4.2の解説では、直接基礎のように基礎底面深度が浅い場合、支持地盤が完全に飽和していないことがある点にも注意を促しています。φ = 0 という前提そのものが崩れる場合があるということです。
c = qu/2 が使えるのは、一軸圧縮試験の供試体を成形できる試料に限られます。自立しないほど軟らかい試料や不飽和土では、三軸圧縮試験による非圧密非排水試験に回ります。詳しくは記事の後半で説明します。
使ってはいけない条件は3つある
1. N値5未満の軟弱な粘性土
道路橋示方書Ⅳ下部構造編 4.2の解説は、N値が5未満であるような軟弱な粘性土を別扱いにしています。標準貫入試験の結果からせん断強度を推定することは適当でない、という記述です。理由は、標準貫入試験の打撃エネルギーが大きすぎることです。
63.5kgfのハンマーを75cm自由落下させる試験で、軟らかい粘土に対しては最初の一撃で貫入が進んでしまいます。N値1と2の差が、強度の差をほとんど表しません。この範囲では乱れの少ない試料を採取して、室内試験で求める必要があります。
軟弱地盤の圧密沈下や、粘性土の斜面安定を検討する場面は、まさにこのN値5未満の領域に当たります。N値からの換算に頼らず、試験値を用意してください。
2. 砂質土・礫質土
一軸圧縮試験は、供試体を横から拘束せずに自立させて圧縮する試験です。砂は自立しないため、そもそも試験が成立しません。一軸圧縮強さは粘性土の指標であり、砂質土・礫質土に対して qu を出すことに意味がありません。
N値からの土質定数推定でも、quと粘着力cは土質区分を粘性土にしたときだけ算定します。砂質土・礫質土では内部摩擦角φを推定する側に切り替わります。
3. 砂れき・玉石を含む地層
道路橋示方書Ⅳ下部構造編 4.2の解説は、砂れき層についてN値が過大に出る傾向があると指摘しています。サンプラーの先端が礫をたたくと、地盤の強度ではなく礫の抵抗を測ってしまうためです。
土質調査指針も、岩や玉石層に対して標準貫入試験を行っても、サウンディングとしての実用的な意義はないとしています。柱状図に礫混じり・玉石混じりの記載がある層は、N値そのものを疑ってかかる必要があります。
使いどころは概略検討まで。本設計には室内試験の値を使う
ここまでの制約を踏まえると、N値からの換算が役に立つのは次の場面です。
- 調査計画を立てる段階で、どの深さの試料を採るか決めるとき
- 概略検討・比較設計で、複数案のおおよその成立性を見るとき
- 室内試験の結果が出てきたときに、桁が合っているかを確かめるとき
- 既存の柱状図しかない土地で、追加調査の必要性を判断するとき
この使い分けは、土質調査指針の 6-2 適用にも書かれています。サウンディングの結果と土層の強さを結ぶ関係式には、幅があるためです。指針は、ある範囲の誤差が許容される概略設計であれば、関係式で土層の強さを判定しても支障はないとしています。
一方、精度を要求される詳細設計のための調査では、結果を吟味して利用すべきだとしています。
逆に、断面や配筋が決まる本設計の入力値としては使いません。設計計算書に「N値から換算」と書いた粘着力で支持力を出すと、根拠を問われたときに説明ができなくなります。
なお、N値から推定できるのは一軸圧縮強さと粘着力だけではありません。砂質土の内部摩擦角φ、変形係数E0、地盤反力係数、相対密度、せん断波速度も同じN値から推定できます。それぞれ適用範囲が違うため、まとめて確認できるようにしたのがN値からの土質定数推定です。
よくある疑問
N値がゼロ(自沈)のときはどうするか
換算式は使うことができません。qu = 12.5N にN = 0を入れると強度がゼロになり、計算が成立しません。自沈層は乱れの少ない試料の採取か、オランダ式二重管コーン貫入試験・ベーンせん断試験など、軟弱土に適したサウンディングで強度を求めます。
換算N値を使えばよいのではないか
換算N値は上載圧の影響を取り除いて砂の相対密度を比べるための値です。粘性土の一軸圧縮強さの換算には使いません。土質ごとに使う指標が違う点に注意してください。
一軸圧縮試験と三軸圧縮試験のどちらで求めるべきか
道路橋示方書Ⅳ下部構造編 4.2の解説は、室内試験であれば三軸圧縮試験から求めるのがよいとしています。そのうえで、軟らかい粘性土の非排水せん断強度については一軸圧縮試験からqu/2としてよい、と続けています。原則は三軸圧縮試験です。
ただし「軟らかい粘性土なら一軸圧縮試験でよい」と読むのは危険です。一軸圧縮試験は、供試体を横から拘束せずに自立させる試験だからです。土質調査指針 11-4-2 は、供試体の高さを直径の2〜2.5倍とし、ワイヤーソーや直ナイフで成形すると定めています。
成形しても形を保てない試料では、試験そのものが成立しません。軟らかいほど一軸圧縮試験に向かうのではなく、自立させられる範囲までが一軸圧縮試験の守備範囲です。
土質調査指針 11-4 も、不飽和土・きれつのある粘土・深い地盤から採取した粘着性の高い土については、三軸圧縮試験による非圧密非排水試験で cu、φu を求めるとしています。試料の状態を見て試験を選ぶことになります。
まとめ:N値からの換算は当たりをつけるための手段
- qu = 12.5N は、Terzaghi・Peckの区分表の下限を直線で近似した式。12.5はkgf/cm2からの単位換算で出た数字
- もとの対応は幅を持った区分なので、同じN値でもquは倍近く振れる
- N値5未満の軟弱な粘性土には使えない(道路橋示方書Ⅳ下部構造編 4.2)
- 砂質土・礫質土には使えない。一軸圧縮強さは粘性土の指標
- 礫を含む層はN値自体が過大に出るため、換算値も過大になる
- 使いどころは調査計画・概略検討・桁の確認。本設計の入力値には室内試験の値を使う
手元のN値でどこまで見積もることができるかを確かめるには、N値からの土質定数推定に地層構成を入力してください。土質区分ごとに推定できる定数が切り替わり、帳票には推定式と適用範囲も載ります。