もたれ式擁壁の安定計算・構造計算|道路土工 擁壁工指針に準拠

v2.0.3 最終更新日: 2026-10-01

インストール不要で使える無料のもたれ式擁壁(地山や切土部にもたれた状態で本体自重のみで土圧に抵抗する無筋コンクリート擁壁)設計計算用フリーソフトです。道路土工 擁壁工指針 5-7-3により、滑動・転倒・支持の安定計算と、躯体・つま先版の部材(断面)計算を行います。

このツールで検討できること
  • 延長1mあたりの断面で、転倒・滑動・支持の安定計算と、躯体・つま先版の部材(断面)計算を行います。
  • 壁面地盤反力を考慮した簡便法により、地山にもたれる形式として照査します。
対象外・注意が必要な条件
  • 背面に地山があることが安定の前提です。自立する擁壁として設計するものではありません。
  • 転倒の照査条件(d>B/2)は、一般の擁壁(|e|≦B/6など)と逆向きの条件です。他形式の感覚で判断しないでください。
  • 無筋コンクリートが対象で、鉄筋による断面照査は行いません。背面土は単一土層・水位なしとして扱います。
  • 土圧は盛土部の試行くさび法(または入力した土圧係数)で求め、背後の切土のり面や地山斜面の影響を受ける切土部の土圧は扱いません。背面地盤と基礎地盤を含む全体の安定も計算しません。

適用範囲と計算上の仮定をすべて見る

1. 基本条件

もたれ式擁壁は、地山または切土部にもたれた状態で本体自重のみで土圧に抵抗する形式です。道路土工 擁壁工指針では常時・地震時の2ケースで照査します。常時は荷重の組合せ「自重+載荷重+土圧」と「自重+土圧」の両方を計算して照査ごとに不利な方を採り、地震時は上載荷重を組み合わせません(擁壁工指針 4-2-1(2))。

設計水平震度の標準値kh0を解表5-1から自動で求めるために使用します。

「道路土工要綱 巻末資料 資料-1」に示す地域別補正係数です。設置地点が地域の境界線上にある場合は係数の大きい方を用います。

kh = cz × kh0(解5-1)で自動計算されますが、直接入力した値がそのまま使われます。標準値kh0はレベル1地震動でⅠ種0.12・Ⅱ種0.15・Ⅲ種0.18、レベル2地震動でⅠ種0.16・Ⅱ種0.20・Ⅲ種0.24(解表5-1)。

2. 躯体形状

底版下面から擁壁天端までの高さです。

擁壁の規模、天端への防護柵等の設置の有無、施工性等を考慮して決定します。

鉛直1に対する水平方向のずれです(上に行くほど背面側へずれる)。擁壁工指針 解表5-4の目安: 擁壁高5m以下は1:0.3、5〜7mは1:0.4、7m以上は1:0.5。支持の簡便法に用いる係数κl(解表5-5)は1:0.3〜1:0.5の値しか示されていないため、この範囲の外では表の端の値(0.50または0.70)を用います。

鉛直1に対する水平方向のずれです。躯体の下端幅が天端幅より広くなるよう、通常は背面勾配Nより大きい値とします。

底版(フーチング)の厚さです。0を入力すると底版なし(躯体が直接底面で地盤に接する形状)として扱います。

底版のうち躯体前面より前方へ張り出す長さです。張出し長が底版厚の1/2に満たない場合、指針により部材照査を省略できます。

底版のうち躯体背面より後方へ張り出す長さです。もたれ式擁壁では通常0とします。土圧は、底版の後面・かかとの上面・躯体背面をつないだ面に作用させ、かかとの上の土は土くさびに含めます。底版があるとき、壁面摩擦角を測る面の向きは、かかと下端と躯体背面の天端を結ぶ面で取ります。

3. 土砂形状

躯体背面(土砂天端位置)から法尻までの水平距離です。0にすると躯体の直上から法が立ち上がります。もたれ式は背面が後ろへ傾いているため、起点は底面の後端(かかと)ではなく、土砂天端の高さにおける躯体背面の位置です。法担ぎの形状(法までの距離・法高・法幅)は試行くさび法の土圧だけに効き、土圧係数法では土圧に反映されません。

4. 荷重条件

擁壁工指針 5-2-4(2)は主働土圧を試行くさび法により算定することを標準としています。土圧係数法は概算用です。

もたれ式擁壁の背面は背面側へ傾いているため、鉛直な壁面を前提とした土圧係数をそのまま用いると土圧を過大に見込みます。試行くさび法の利用を推奨します。地震時は地震時主働土圧係数Kaeの値を入力してください。

土圧の算定に用いる背面土のせん断抵抗角です。壁面摩擦角δは擁壁工指針 解表5-2により、常時2φ/3・地震時φ/2として自動的に設定します。

背面地表面に作用する等分布荷重です。常時は、この荷重を載せた組合せと載せない組合せの両方を計算します。地震時は組み合わせません(擁壁工指針 4-2-1(2))。法担ぎがあるときは、法肩より奥の平場だけに載せます。

5. 材料

もたれ式擁壁は通常無筋コンクリートとして設計されます。

無筋コンクリートの許容圧縮応力度です。擁壁工指針 表4-6によりσck/4かつ5.5以下(σck=18で4.50)。

無筋コンクリートの許容曲げ引張応力度です。擁壁工指針 表4-6によりσtk/7かつ0.3以下(σtkはコンクリートの設計基準引張強度)。既定値の0.30はこの上限の値で、σtkから求めた値ではありません。σtkが分かる場合はσtk/7と0.3の小さい方を入力してください。躯体断面には引張応力が生じないようにするのが望ましいとされています。

コンクリートのみでせん断力を負担する場合の許容せん断応力度τa1です。擁壁工指針 表4-3の値(σck=21で0.22、24で0.23、27で0.24、30で0.25)。表4-3はσck=21からのため、σckが21未満のときは21の値(0.22)を自動入力します(表に値はありません)。部材断面の有効高に関する補正係数ccは自動で乗じます。

擁壁工指針 表4-2により、地震の影響を考慮する場合は1.50。

6. 地盤条件

擁壁工指針 解表4-9の参考値: 岩盤0.7、礫層0.6、砂質土0.6、粘性土0.5(基礎地盤が土の場合は0.6を超えないものとする)。

擁壁工指針 解表4-9では付着力を考慮しないこととしているため、通常は0とします。

擁壁工指針 解表4-8の参考値(常時値): 亀裂の少ない均一な硬岩1000、亀裂の多い硬岩600、軟岩・土丹300、密な礫層600、密でない礫層300、密な砂質地盤300、中位の砂質地盤200、非常に硬い粘性土200、硬い粘性土100。解表4-8の値は、斜面上でない高さ8m以下の擁壁で、現地の試験を行うことが困難な場合に使うことができます。斜面上の直接基礎では、斜面の影響を考えた許容支持力度も検討してください。地震時は自動で1.5倍します。

擁壁工指針 5-3-2(1)1)により常時1.5。

擁壁工指針 5-3-2(1)1)により地震時1.2。

リアルタイムプレビュー

計算方法と適用範囲

このツールで計算できること

もたれ式擁壁(地山または切土部にもたれ、本体自重のみで土圧に抵抗する無筋コンクリート擁壁。延長1mあたり)について、土圧の算定、転倒(合力の作用位置)・滑動・支持の安定計算と、躯体水平断面の縁応力度・平均せん断応力度による部材照査を行います。常時に加えて、設計水平震度を用いた地震時の照査に対応します。

計算方法・使用式

  • 土圧: 試行くさび法(すべり面角度を変えて土くさびのつり合いから最大の土圧を求める方法。地震時は慣性力を加えた地震時土圧)と、土圧係数法(Ka直接入力)を選択できます。作用面は躯体コンクリートの背面です(指針5-2-4)。
  • 荷重の組合せ: 常時は「自重+載荷重+土圧」と「自重+土圧」の両方を計算し、照査ごとに不利な方を採ります。もたれ式擁壁は壁面地盤反力が土圧と逆向きにつり合うため、上載荷重を除くと壁面地盤反力が大きくなり、躯体の引張が大きくなることがあります。地震時は自重と地震の影響を組み合わせ、上載荷重は組み合わせません(指針4-2-1)。
  • 法担ぎ: 「法までの距離」は、躯体背面(土砂天端の高さにおける背面の位置)から法尻までの水平距離です(0で躯体の直上から法が立ち上がる)。背面が後ろへ傾いているため、底面の後端(かかと)ではなく傾斜した背面が起点になります。上載荷重は法肩より奥の平場だけに載せます。法担ぎの形状は試行くさび法の土圧だけに効き、土圧係数法では、入力した Ka に地表面の形状を見込んでください。
  • 転倒: 合力の作用位置dで照査します。もたれ式擁壁は背面側へ傾いた形式のため、一般の擁壁と逆に、dがつま先から見て常時 d>B/2(底面中央より後方)、地震時 d≧B/3にあることを確認します(指針5-7-3、式 解5-11)。
  • 支持: 合力の作用位置 d が底面幅の1/2より後方にあるときは簡便法(式 解5-26〜解5-29。壁面傾斜角と係数κl・κd(解表5-5)を用い、壁面地盤反力Qtを考慮して底面反力を求める方法)で、1/3〜1/2 にあるときは台形分布の式(解5-17・解5-18)で地盤反力度を求め、許容支持力度と比較します。

    κl は背面勾配 1:0.3〜1:0.5 の値しか示されていないため、その外では表の端の値を用います。合力が底面中央の2/3の範囲の外にあるときは、地盤反力度を算定できないため支持を NG とします。

  • 滑動: Fs = (V・μ+cB・B′)/H で照査します(指針5-3-2)。
  • 部材照査: 躯体の水平断面について、無筋コンクリート断面の縁応力度(圧縮・引張)と平均せん断応力度を求め、許容応力度と比較します(指針5-4)。つま先版は、張出し長が版厚の1/2に満たないときは照査を省略できるため(指針5-7-2)、値を参考として示し、総合判定に含めません。

入力と出力

入力: 検討ケース・地盤種別・地域別補正係数cz・設計水平震度kh、躯体形状(擁壁高H・天端幅・背面勾配1:N・前面勾配・基礎部寸法)、土砂形状(法担ぎ・天端からの下がり)、土圧条件(算定方法・Ka・γ・φ・上載荷重q)、材料(単位体積重量・Fc・許容応力度)、地盤条件(摩擦係数μ・付着力cB・許容支持力度・滑動の許容安全率)。

出力: 転倒(合力の作用位置d)・滑動・支持(地盤反力度)の照査結果と、躯体各断面の縁応力度・せん断応力度照査のOK/NG判定。計算過程つきの帳票(計算書)を出力できます。

適用範囲・計算上の仮定

  • 延長1mあたりの2次元断面として計算します。
  • 地山・切土部にもたれる前提の形式です。背面に地山があることが安定の前提で、自立する擁壁として設計するものではありません。
  • 無筋コンクリートを対象とし、鉄筋による断面照査は行いません。
  • 背面土は単一土層・水位なしとし、地下水位・水圧は考慮しません。
  • 滑動照査では受働土圧による抵抗を見込みません。
  • 土圧は盛土部としての値です。背後に切土のり面や地山斜面が近く、主働土圧がその影響を受ける場合(切土部土圧。指針5-2-4)は扱いません。
  • 背面地盤及び基礎地盤を含む全体としての安定(指針5-3-4)は計算しません。もたれ式擁壁は山岳地の斜面等に設置されることが多いため、別途確認してください。
  • 転倒の照査条件(d>B/2)は一般の擁壁(|e|≦B/6等)と逆向きの条件です。他形式の感覚で判断しないよう注意してください。

使用基準・参考文献・設計者が確認すべき事項

  • 道路土工 擁壁工指針(平成24年7月、日本道路協会): もたれ式擁壁の設計(5-7-3、式 解5-11、簡便法 式 解5-26〜解5-29・解表5-5)、荷重の組合せ(4-2-1)、土圧の算定(5-2-4)、安定性の照査(5-3-2)、無筋コンクリート部材の照査(5-4)。 Amazonで見る

設計水平震度・許容応力度・土質定数・許容支持力度は設計条件に応じて設定してください。背面地山の状態(もたれの成立性)、基礎の根入れ、排水工、施工時の安定は本ツールの計算外です。設計者が別途確認してください。

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