逆T型擁壁の安定計算・構造計算|盛土等規制法・道路土工指針に準拠

v2.1.3 最終更新日: 2026-10-01

インストール不要で使える無料の逆T型擁壁設計計算用フリーソフトです。転倒・滑動の安定計算と地盤反力度の算定に加えて、竪壁・底版の部材(断面)計算による断面照査も行うことができます。

このツールで検討できること
  • 延長1mあたりの断面で、転倒・滑動の安定計算と、合力の作用位置・地盤反力度の算定を行います。
  • 竪壁基部・つま先版・かかと版について、許容応力度法による部材(断面)計算を行います。配筋は直接入力のほか、指定した鉄筋径・ピッチの範囲から照査を満たすものを選ぶ自動計算も選ぶことができます。
  • 盛土等防災マニュアルの解説と道路土工 擁壁工指針を選ぶことができます(安全率・単位体積重量・照査方法が変わります)。
対象外・注意が必要な条件
  • 背面土は単一土層・水位なしの盛土部として扱い、地下水位・水圧・浮力と、切土面が近い場合の土圧は考慮しません。道路土工 擁壁工指針が別途検討とする、かかと版が短い場合の仮想背面の壁面摩擦角の扱いは当てはめません。
  • 滑動照査で受働土圧による抵抗は見込みません。支持力は必要地耐力の表示(既定)か、入力した許容支持力度との比較を選ぶことができます(許容支持力度は直接基礎の地耐力計算へ連動して求めることができます)。背面盛土・基礎地盤を含む全体としての安定は照査しません。
  • 構造細目(最小鉄筋量・かぶり・鉄筋間隔など)の照査は行いません。背面ハンチは自重として計上しますが、ハンチ自体の断面計算は行いません。つま先版上の土砂(根入れ部分)は見込みません。

適用範囲と計算上の仮定をすべて見る

1. 基本条件

安全率・単位体積重量・転倒の照査方法などが基準によって異なります。選択すると、それぞれの既定値が自動入力されます。

法担ぎがある場合は、盛土形状をそのまま扱うことができる試行くさび法によるのがよいとされています(擁壁工指針 5-2-4(2))。土圧係数法では法面を等分布荷重に置き換えて扱うため、法までの距離・法幅と、地表面の傾斜による土圧係数の増加は反映されず、法が擁壁に近く法幅が狭い場合は、形状どおりの土圧より小さくなることがあります。

参考値(盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕表Ⅷ・3-2、政令別表第二): 砂利又は砂 0.35、砂質土 0.40、シルト・粘土又はそれらを多く含む土 0.50。別表第二の値を使える背面の条件は同マニュアル 図Ⅷ・3-3 で確認してください。盛土等防災マニュアルの解説を選んだ場合の中地震時・大地震時は、この土圧係数(常時の値)による土圧に自重の慣性力を加えて照査します(同マニュアルの、別表第二の土圧係数を用いる場合の扱い)。道路土工 擁壁工指針の地震時は、地震時主働土圧係数を入力してください(躯体の慣性力は自動で加えます)。

擁壁自体の安定計算に用いる土圧の作用面です。「仮想背面」はかかと版後端を通る鉛直面で、道路土工 擁壁工指針 5-2-4(1) と盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕図Ⅷ・3-7 の方法です。作用面の状況が「土と土」となるため、壁面摩擦角は常時は仮想のり面傾斜角β′(地表面が水平なら0)、地震時は擁壁工指針 式(解5-8)による値とします。「実背面」は竪壁の背面を作用面とし、底版下端からの全高で土圧を求める盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕図Ⅷ・3-6 の方法で、壁面摩擦角は常時2φ/3・地震時φ/2(透水マット使用時は常時もφ/2)です。同マニュアルが地表面が水平な場合に限る方法としているため、法担ぎがあるときは選べません。盛土等防災マニュアルの解説の地震時の「自重の慣性力+常時の土圧」の組合せは常時の土圧を用いるため、壁面摩擦角も常時の値(仮想背面はβ′、実背面は2φ/3、透水マット使用時はφ/2)とします。竪壁の部材設計に用いる土圧は、この選択によらず竪壁背面で別に算定します。

盛土等防災マニュアルの解説は常時・中地震時・大地震時、道路土工 擁壁工指針は常時・地震時で照査します。

地震時(震度法)の設計水平震度です。標準値の目安: 盛土等防災マニュアルの解説は中地震時0.20・大地震時0.25(地域別補正係数czを乗じる)。道路土工 擁壁工指針はレベル1地震動でⅠ種0.12・Ⅱ種0.15・Ⅲ種0.18、レベル2地震動でⅠ種0.16・Ⅱ種0.20・Ⅲ種0.24(地域別補正係数czを乗じる。レベル1・レベル2とも照査の方法は同じで、khだけが変わります)。検討ケースを選ぶと、盛土等防災は0.20・0.25、道路土工は0.15(レベル1・Ⅱ種)が自動入力されます。地域・地盤種別に応じて設定してください。

2. 躯体形状

底版下端からの全高です(底版厚H2を含みます。竪壁自体の高さはH1から竪壁かかと側直下の底版厚(H2+H3b)を差し引いて算出されます)。

つま先側(前面)の底版張出し長さです。かかと版長(背面側の張出し)は、基礎幅Bからつま先版張出長と基部の壁厚を差し引いて自動的に算出されます。つま先版上の土砂(根入れ部分)は、安定計算にも部材計算にも見込みません(根入れが深い場合は別途検討してください)。

H2はつま先先端の底版厚です。H3aは竪壁前面の直下でH2より厚くする量で、そこからつま先先端へ向かって薄くなります(0で一定厚)。つま先版の自重は、この形(台形)で求めます。

H3bは竪壁背面の直下でH2より厚くする量で、そこからかかと先端へ向かって薄くなります(0で一定厚)。かかと版の自重は、この形(台形)で求めます。

竪壁背面と底版上面(かかと版)の入隅に設ける45度の等辺ハンチの寸法です。高さ・水平の出とも f1 になります(0でハンチなし)。かかと版側のみに設け、つま先版側には設けません。ハンチのコンクリートを自重に加え、その分のかかと版上の土砂を控除します。断面照査は、竪壁がハンチ上端(底版上面から f1 上)、かかと版がハンチ端(竪壁背面から f1 背面側)を設計断面とします。

3. 土砂形状

竪壁の背面(背面土の天端の高さでの位置)から法尻までの水平距離です。0にすると擁壁の直上から法が立ち上がります。土圧の算定方法に「土圧係数法」を選んだ場合、法面は γ×法高÷2 の等分布荷重に置き換えて土圧を求めるため、この値は土圧には反映されません(かかと版の上の土の形と、載荷重を載せる範囲には用います)。

法尻から法肩までの水平距離です。土圧の算定方法に「土圧係数法」を選んだ場合、法面は γ×法高÷2 の等分布荷重に置き換えて土圧を求めるため、この値は土圧には反映されません(かかと版の上の土の形と、載荷重を載せる範囲には用います)。

4. 材料

参考値: 道路土工 擁壁工指針 24.5kN/m3(鉄筋コンクリート、4-2-2)。盛土等防災マニュアルの解説を選んだときの24kN/m3は、同マニュアルの計算例(参考8.21)の設計条件の値です。設計基準の選択に応じて自動入力されます。

土圧の作用面が「土とコンクリート」となる部分の壁面摩擦角δを、常時2φ/3に代えてφ/2とします(盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕Ⅷ・3・2・1 解説1(2)ア)。地震時土圧を用いる組合せは、透水マットの有無によらずφ/2です(盛土等防災マニュアルの解説の地震時の「自重の慣性力+常時の土圧」の組合せは常時の値を用いるため、透水マットを使用するとφ/2、使用しないと2φ/3です)。影響するのは、竪壁の部材設計に用いる土圧と、土圧の作用位置に「実背面」を選んだ場合の安定計算です。「仮想背面」の安定計算は作用面が「土と土」となるため影響を受けません。

参考値(盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕表Ⅷ・3-3、政令別表第三): 岩・岩屑・砂利・砂 0.50、砂質土 0.40、シルト・粘土又はそれらを多く含む土 0.30(擁壁の基礎底面から少なくとも15cmまでの深さの土を砂利又は砂に置き換えた場合に限る)。同マニュアルでは原則として μ=tanφ とし、基礎地盤が土の場合は0.6を超えないものとしています。

5. 荷重条件

背面の地表面に載る等分布荷重です。法担ぎがあるときは、法肩より奥の平場だけに載せます(土圧と、かかと版の上の載荷重の両方。盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕図Ⅷ・3-7)。道路土工 擁壁工指針の地震時は組み合わせません(同指針 4-2-1(2))。

6. 配筋条件

竪壁・つま先版・かかと版のかぶりの入力値の意味です。芯かぶりはコンクリート表面から主鉄筋の中心まで、純かぶりは主鉄筋の表面までの距離で、有効高さは芯かぶりなら d = h − c、純かぶりなら d = h − c − 鉄筋径/2 で求めます。構造図作成へ引き継ぐときは純かぶりに換算して渡します。

7. 許容値

盛土等防災マニュアルの解説の常時と中地震時の転倒の照査です。「安全率のみで照査」は同〔Ⅰ〕表Ⅷ・3-8 のとおり、常時は安全率で照査し、中地震時は転倒を照査しません。「安全率+偏心量で照査」は、あわせて合力の作用位置の偏心量を照査し、総合判定に含めます。常時は底版中央の1/3(ミドルサード)の中にあること(|e|≦B/6)、中地震時は底版中央の2/3の中にあること(|e|≦B/3)を照査します(中地震時は安全率を照査しないので、偏心量だけの照査になります)。偏心量の照査は同マニュアルには無いので、自治体との協議などで求められた場合に選んでください(大地震時は安全率のみで照査します)。

地震時の部材照査に用いる割増し係数です。設計基準の選択に応じて自動入力されます(建築基準法施行令第91条では短期=長期の2倍、道路土工 擁壁工指針 表4-2では1.50)。

同上(建築基準法施行令第90条表二では異形鉄筋の短期=基準強度F、道路土工 擁壁工指針では表4-10の地震時の基本値に表4-2の割増し係数1.50を乗じた値に相当)。

設計基準の選択とコンクリートの設計基準強度に応じて自動入力されます(盛土等防災マニュアルの解説は建築基準法施行令第91条のFc/3、道路土工 擁壁工指針は表4-3の曲げ圧縮応力度)。表4-3は設計基準強度21〜40の値で、表にない値の補間は30までで、30を超える表にない値は設計基準強度の1/3とします(40は表の値)。21未満は表の範囲外のため自動入力しません。

同上(盛土等防災マニュアルの解説は建築基準法施行令第91条のFc/30。Fcが21を超える場合は平成12年建設省告示第1450号 第二の 0.49+Fc/100。道路土工 擁壁工指針は表4-3のτa1で、30を超え40未満は30の値、40を超える場合は40の値とします)。τa1には有効高及び軸方向引張鉄筋比に関する補正係数(表4-4・表4-5)を断面ごとに自動で乗じます。本ツールは斜引張鉄筋を配置しない前提でτ≦τa1を照査します。

設計基準と使用鉄筋材に応じて自動入力されます(盛土等防災マニュアルの解説は建築基準法施行令第90条表二のF/1.5で、径28mm以下は215、28mmを超える径(D29以上)は195を上限とします。配筋を自動計算するときは径28mm以下の値を入れ、D29以上の候補には195の上限を掛けて照査します。道路土工 擁壁工指針は表4-10の一般の部材の値)。

既定では、最大地盤反力度を必要地耐力として表示するだけで、支持力は照査しません。「入力した許容支持力度と比較する」を選ぶと、最大地盤反力度が入力した地盤の許容支持力度(地耐力)以下かを照査し、総合判定に含めます。許容支持力度そのものは計算しないので、求めるときは計算結果から直接基礎の地耐力計算へ連動してください。盛土等防災マニュアルの解説の中地震時は、支持力を照査しません(同〔Ⅰ〕表Ⅷ・3-8)。

検討ケースに応じた値を入力してください。盛土等防災マニュアルの解説では、常時は長期許容支持力度、大地震時は極限支持力度と比べます(同〔Ⅰ〕表Ⅷ・3-8)。道路土工 擁壁工指針では、常時と地震時で安全率が異なります(解表4-7。常時3、地震時2)。本ツールは最大地盤反力度と比べます(同指針が静力学公式の許容支持力度に対して示す、有効載荷幅による平均の地盤反力度との比較(式(解5-14))は行いません)。

リアルタイムプレビュー

計算方法と適用範囲

このツールで計算できること

逆T型擁壁(つま先版・かかと版の両方を持つ形式。延長1mあたり)について、土圧の算定、転倒・滑動の安定計算、合力の作用位置と地盤反力度の算定、竪壁・つま先版・かかと版の許容応力度法による部材(断面)計算を行います。常時に加えて、設計水平震度を用いた震度法による地震時の照査に対応します。

計算方法・使用式

  • 土圧: 試行くさび法(すべり面の角度を変えながら土くさびの力のつり合いを解き、壁に作用する力の水平成分が最大となるものを主働土圧とする方法)と、土圧係数法(Pa = 1/2・Ka・γ・H^2 + Ka・q・H。Kaは直接入力)を選択できます。試行くさび法の地震時は、土くさびの自重に慣性力kh・Wを加えて解きます(道路土工 擁壁工指針 5-2-4(5))。
  • 土圧の作用面: 擁壁自体の安定性の照査では、かかと版後端を通る鉛直面(仮想背面)を作用面とします(道路土工 擁壁工指針 5-2-4(1)、盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕図Ⅷ・3-7)。竪壁の部材設計では、竪壁の背面(実背面)を作用面として土圧を別に求めます。

    盛土等防災マニュアルの解説を選んだ場合は、同マニュアルの図Ⅷ・3-6 の方法(竪壁の背面を作用面とし、底版下端からの全高で土圧を求める方法)も選べます。同マニュアルがこの方法を地表面が水平な場合に限っているため、法担ぎがあるときは選べません。

  • 壁面摩擦角: 仮想背面は作用面の状況が「土と土」となるため、常時は壁面摩擦角に代えて仮想のり面傾斜角β′を用い(β′>φのときはφ)、地震時は擁壁工指針 式(解5-8)(解5-9)により求めます(同 解表5-2。盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕の式Ⅷ・3-18・3-19も同じ式です)。地表面が水平ならβ′は0ですが、地震時の壁面摩擦角は0になりません。

    実背面と竪壁の部材設計は「土とコンクリート」となるため、常時2φ/3・地震時φ/2とします。透水マットを用いる場合はφ/2とします(擁壁工指針に規定が無いため、盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕Ⅷ・3・2・1 解説1(2)ア によります。同マニュアルは地震時を透水マットの有無によらずφ/2としています)。盛土等防災マニュアルの解説の地震時の「自重の慣性力+常時の土圧」の組合せは常時の土圧を用いるため、壁面摩擦角も常時の値とします。

  • 法担ぎ: 「法までの距離」は竪壁背面(背面土の天端の高さでの位置)から測ります。試行くさび法では、この形状をそのままくさびに入れて自重を求めます。上載荷重は、くさびの上でもかかと版の上でも、法肩より奥の平場にだけ載せます(盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕図Ⅷ・3-7)。

    仮想背面のβ′は、擁壁天端とすべり面の範囲で背面ののり面が一様ならのり面の傾斜角とし、のり面の形が変わる場合は擁壁工指針 解図5-5 の方法(擁壁天端の背面a点と、法肩または仮想背面からすべり面と盛土の天端面との交点までを二等分したb点を結んだ線の傾き)で定めます。天端に平場があり、すべり面が法面の途中で地表に達する場合は、基準に定めが無いため、a点とその交点を結んだ線の傾きとしています。すべり面とβ′は互いに依存するため、収束するまで繰り返します。

  • 土圧係数法での法担ぎ: すべり面を仮定しないため盛土の形をそのまま扱えません。法面(法幅×法高の直角三角形断面)の土砂重量を法幅の区間に均した等分布荷重 γ・法高/2 に置き換え、上載荷重に加算します。

    この置き換えは基準に定めの無い近似で、「法までの距離」は反映されず、法が擁壁に近く法幅が狭い場合は、法面の形をそのまま解いた土圧より小さくなることがあります。盛土形状が変化する場合は試行くさび法によるのがよいとされています(擁壁工指針 5-2-4(2))。

  • 土圧の作用方向と鉛直成分: 土圧は作用面の法線から壁面摩擦角のぶん傾いて作用します。安定計算では、その水平成分を土圧として水平力に、鉛直成分を鉛直力に加えます(擁壁工指針 式(解5-10)、盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕式Ⅷ・3-12)。仮想背面の場合、鉛直成分は仮想背面の位置に作用させます。
  • 自重: 壁体・底版の自重に加え、竪壁背面から仮想背面までの、地表面(法担ぎがあれば法面)までの土砂の重量を擁壁の重量として見込みます(擁壁工指針 解図4-1、盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕図Ⅷ・3-4)。つま先版上の土砂(根入れ部分)は見込みません。
  • 地震時の荷重: 道路土工 擁壁工指針では、荷重の組合せを「自重+地震の影響」とし(4-2-1(2))、地震時土圧と躯体の慣性力を考慮します。上載荷重は組み合わせません。盛土等防災マニュアルの解説では、「地震時土圧による荷重」と「自重に起因する地震時慣性力に常時の土圧を加えた荷重」の大きい方を用います(同〔Ⅰ〕Ⅷ・3・2・1 1(1)イ(エ))。

    本ツールは両方を計算し、転倒・滑動・地盤反力度・部材の断面力ごとに不利な方を採ります。土圧係数法では地震時の土圧を算定しないため、入力した土圧係数による土圧に慣性力を加えた荷重とします(同マニュアルの、政令別表第二の土圧係数を用いる場合の扱い)。慣性力は、躯体とかかと版上の土砂の重量に設計水平震度を乗じ、それぞれの重心に作用させます。上載荷重には乗じません。

  • 転倒: 盛土等防災マニュアルの解説では安全率 Fs = 抵抗モーメント/転倒モーメント、道路土工 擁壁工指針では合力の作用位置(常時 |e|≦B/6、地震時 |e|≦B/3)で照査します。盛土等防災マニュアルの解説には偏心量の照査が無いため、同マニュアルを選んだ場合の偏心量は、既定(「転倒の照査」が「安全率のみで照査」)では参考として表示します。

    自治体との協議などで合力の作用位置がミドルサードの中にあることを求められた場合は、「安全率+偏心量で照査」を選ぶと、常時は転倒の照査に |e|≦B/6 を加え、中地震時は |e|≦B/3 を照査して、総合判定に含めます(中地震時は安全率を照査しないので、偏心量だけの照査になります。大地震時は安全率のみで照査します)。道路土工 擁壁工指針を選んだ場合、滑動・転倒の照査ではかかと版上の載荷重を無視します(同 4-2-3)。

  • 滑動: Fs = μ・ΣV / ΣH。擁壁前面の受働抵抗は見込みません。地震時は、土圧に躯体・土砂の慣性力を加えた水平力で照査します(盛土等防災マニュアルの解説を選んだ場合は、上記の2つの荷重のうち不利な方)。
  • 地盤反力度: |e|≦B/6のとき台形分布 qmax = ΣV/B・(1+6e/B)、B/6を超えるときは有効載荷幅 3(B/2−|e|) の三角形分布 qmax = 2ΣV/(3(B/2−|e|)) とします(分布形の切替は、偏心量の許容値によらず B/6 です)。

    三角形分布の式は合力が底面中央の2/3の範囲(|e|≦B/3)にあるときのもので、それを超える場合は「算定範囲外」と表示し、支持力を確かめようがないため、支持力を比較しない設定でも「合力の作用位置」として NG とします(盛土等防災マニュアルの解説の中地震時は安定の照査を行わないので除きます。転倒の照査に「安全率+偏心量で照査」を選んだときは、中地震時も偏心量 |e|≦B/3 の照査で NG になります)。

  • 支持力: 既定では、最大地盤反力度を必要地耐力として表示するだけで、支持力は照査しません。「入力した許容支持力度と比較する」を選ぶと、最大地盤反力度が入力した地盤の許容支持力度(地耐力)以下であることを照査し、総合判定に含めます。許容支持力度そのものは計算しません(直接基礎の地耐力計算へ連動して求めることができます。連動先には基準と検討ケースに応じた支持力の安全率を引き継ぎます)。

    盛土等防災マニュアルの解説の中地震時は、支持力を照査しません(同〔Ⅰ〕表Ⅷ・3-8)。道路土工 擁壁工指針が静力学公式の許容支持力度に対して示す、有効載荷幅による平均の地盤反力度との比較(式(解5-14))は行わず、最大地盤反力度と比べます。

  • かぶり: 竪壁・つま先版・かかと版のかぶりは、芯かぶり(コンクリート表面から主鉄筋の中心まで。既定)と純かぶり(主鉄筋の表面まで)から選べます。有効高さは、芯かぶりなら d = h − c、純かぶりなら d = h − c − 鉄筋径/2 とします。
  • 部材計算: 許容応力度法(単鉄筋長方形断面、ヤング係数比n=15)です。竪壁は底版との結合部を固定端とする片持ばりとし、竪壁の背面に作用する土圧で曲げモーメント・せん断力を求めます。

    地震時は、道路土工 擁壁工指針 解図5-40(b) により竪壁の慣性力も加えます(盛土等防災マニュアルの解説を選んだ場合は、慣性力を見込む組合せで加えます)。つま先版は竪壁前面位置を固定端とする片持ばりとし、自重を下向きに、地盤反力(地盤反力度と同じ分布)を上向きに作用させ、下側引張として照査します(擁壁工指針 解図5-44)。

    かかと版は竪壁背面位置を固定端とする片持ばりとし、上載土砂・載荷重・自重と、仮想背面の土圧の鉛直分力(同じ大きさの三角形分布に置き換えたもの。擁壁工指針 解図5-46)を下向きに、地盤反力(地盤反力度と同じ分布)を上向きに作用させ、上側引張として照査します。底版の自重は、底版テーパーがあるときは竪壁の位置の厚さから先端の厚さH2へ直線に薄くなる台形として見込みます。

    道路土工 擁壁工指針を選んだ場合、せん断はつま先版を竪壁前面から、かかと版を竪壁背面から、それぞれ底版厚の1/2 離れた位置で照査し(同 解図5-45・解図5-47。かかと版の位置が曲げの設計断面より竪壁側にある場合は設計断面で照査します)、かかと版つけ根の曲げモーメントが竪壁つけ根の曲げモーメントを超える場合は、竪壁つけ根の値で照査します(同 式(解5-37))。

    せん断スパン比による許容せん断応力度の割増し(同 解表5-9)は見込みません。盛土等防災マニュアルの解説を選んだ場合は、同マニュアルが部材の算定の詳細を日本建築学会の規準に委ねているため、これらの扱いは当てはめず、せん断も曲げと同じ断面で照査します。合力が底面中央の2/3の範囲の外にある場合は、地盤反力を三角形分布の式をその範囲の外まで延ばした分布で求めることになるため、つま先版・かかと版の結果は参考値として扱い、その旨を表示します。

    背面ハンチ(f1)を設けた場合は、竪壁はハンチ上端(底版上面からf1の高さ)、かかと版はハンチ端(竪壁背面からf1背面側)を設計断面とし、その位置の断面厚で照査します(つま先版はハンチの影響を受けません)。せん断は、斜引張鉄筋を配置しない前提で許容せん断応力度と比べます(道路土工 擁壁工指針ではτa1に有効高と鉄筋比の補正係数(表4-4・表4-5)を乗じます)。

  • 許容応力度: 盛土等防災マニュアルの解説を選んだ場合は建築基準法施行令第90条表二・第91条によります(同〔Ⅰ〕Ⅷ・3・2・1 解説1(3))。コンクリートの長期は圧縮Fc/3、せん断Fc/30で、Fcが21を超える場合のせん断は平成12年建設省告示第1450号 第二の 0.49+Fc/100 とし、短期は長期の2倍です。異形鉄筋の長期はF/1.5で、径28mm以下は215、28mmを超えるもの(D29以上)は195を上限とし、短期はFです。

    道路土工 擁壁工指針を選んだ場合は表4-3・表4-10と表4-2の割増し係数によります。表4-3は設計基準強度21〜40の値で、21未満は表の範囲外のため自動入力しません。表にない値の補間は30までで、30を超える表にない値は、曲げ圧縮応力度を設計基準強度の1/3(同指針 4-5-2 の解説)とし、τa1は定めが無いため30の値(40を超える場合は40の値)とします。

  • 配筋の自動計算: 竪壁・つま先版・かかと版それぞれについて、主鉄筋の決め方を「直接入力」(既定)と「自動計算」から選べます。自動計算では、指定した範囲の鉄筋径(最小径〜最大径)とピッチ(最小ピッチから、トライアルピッチのきざみで最大ピッチ以下まで)の組み合わせをすべて試し、コンクリート圧縮σc・せん断τ・鉄筋引張σsの照査をすべて満たすものの中から、優先順位(鉄筋量が少ないもの/鉄筋本数が少ない=ピッチの広いもの)にしたがって1つを採用します。

    判定に使う許容応力度は、検討ケースによる割増しを反映した値です。範囲の中に照査を満たす組み合わせが無い場合は、最も鉄筋量の多い配筋による結果を、その旨とあわせて表示します。その場合は、鉄筋径・ピッチの範囲を広げるか、断面厚を見直してください。

入力と出力

入力: 準拠する設計基準・検討ケース・設計水平震度kh、躯体形状(擁壁高H1・つま先版張出長Lt・天端幅T1・底版厚H2・基礎幅B・各テーパー(前面・背面、底版のつま先側H3a・かかと側H3b)・背面ハンチ高f1)、背面の法担ぎと天端からの下がり、土質条件(γ・φ・土圧係数Ka)、上載荷重q、底版と地盤の摩擦係数μ、コンクリート強度・鉄筋材、配筋の決め方(直接入力/自動計算)と配筋(径・ピッチ・かぶり(芯かぶり/純かぶり)。自動計算のときは鉄筋径・ピッチの範囲、トライアルピッチ、優先順位)、許容安全率・許容応力度(基準の選択に応じて既定値を自動入力)、転倒の照査(盛土等防災マニュアルの常時と中地震時。安全率のみ/安全率+偏心量)、支持力の扱い(必要地耐力のみ表示/入力した許容支持力度と比較)と地盤の許容支持力度。

出力: 転倒(安全率または偏心量)・滑動の照査結果、最大地盤反力度qmax(必要地耐力。比較を選んだときは支持力の照査結果)、竪壁基部・つま先版・かかと版の応力度照査(コンクリート圧縮σc・せん断τ・鉄筋引張σs)のOK/NG判定。計算過程つきの帳票(計算書)を出力でき、構造図作成・直接基礎の地耐力計算・浅層改良・柱状改良の各ツールへ条件を引き継ぐことができます。

合力が底面中央の2/3の範囲の外にあるときは、地盤反力度を引き継ぐことができないため、構造図作成にだけ引き継ぎます。盛土等防災マニュアルの解説の地震時に2つの荷重の組合せを計算したときは、直接基礎と浅層改良へは最大地盤反力度で採った組合せの荷重を、柱状改良へは組合せごとの荷重を引き継ぎます。

適用範囲・計算上の仮定

  • 延長1mあたりの2次元断面として計算します。
  • つま先版・かかと版を持つ逆T型断面が対象です(前面テーパー・背面テーパー・底版テーパー(つま先側・かかと側)に対応)。つま先版上の土砂(根入れ部分)は、安定計算にも部材計算にも見込みません。根入れが深く、その影響が無視できない場合は別途検討してください(擁壁工指針 5-7-5(3)2))。
  • 背面土は単一土層・水位なしの盛土として扱い、地下水位・水圧・浮力は考慮しません。切土面が近い切土部の土圧(切土面に沿うすべりを考える土圧)は扱いません。
  • 滑動照査では受働土圧による抵抗を見込みません。
  • 支持力は、既定では最大地盤反力度(必要地耐力)の表示までです。「入力した許容支持力度と比較する」を選んだときだけ、入力値と比べて照査します。許容支持力度そのものは求めないので、直接基礎の地耐力計算などで別途求めてください。
  • 背面盛土と基礎地盤を含む全体としての安定(すべり破壊・圧密沈下・液状化など)は照査しません。軟弱層・液状化のおそれのある層がある場合や、斜面上・長大なのり面の下に設ける場合は、別途検討してください。
  • 盛土等防災マニュアルの解説の中地震時は、部材応力度が短期許容応力度以内であることの確認のみ行います(安定照査は常時・大地震時。同〔Ⅰ〕表Ⅷ・3-8)。転倒の照査に「安全率+偏心量で照査」を選んだときは、あわせて偏心量 |e|≦B/3 を照査します。大地震時の部材照査は終局耐力によるため対象外です(参考として常時の許容応力度による結果を表示し、総合判定には含めません)。
  • つま先版の断面照査は下側引張(底版下側主鉄筋)、かかと版の断面照査は上側引張(底版上側主鉄筋)として行います。引張側が逆になる場合は(地震時に荷重の組合せが2つあるときは、どちらか一方でも)、その旨を表示し、逆側の鉄筋は照査しません。
  • かかと版の張出しが短く竪壁が近い場合は、仮想背面の壁面摩擦角を別途検討する必要があります(擁壁工指針 5-2-4(1))。
  • 背面ハンチは竪壁背面とかかと版上面の入隅に設ける45度の等辺ハンチとして扱います。ハンチのコンクリートは自重(と地震時慣性力)に計上し、その分のかかと版上の土砂を控除します。ハンチ自体の断面計算は行いません。
  • 構造細目(最小鉄筋量・最大鉄筋量・かぶり・鉄筋間隔・配力鉄筋・部材の最小厚など)は照査しません。

使用基準・参考文献・設計者が確認すべき事項

  • 盛土等防災マニュアルの解説〔Ⅰ〕[第二次改訂版](令和5年11月): 照査項目と安全率(表Ⅷ・3-8)、地震時荷重(Ⅷ・3・2・1 1(1)イ(エ))、土圧の作用面と壁面摩擦角(Ⅷ・3・2・1 解説1(2)、図Ⅷ・3-6・図Ⅷ・3-7)、地震時土圧と壁面摩擦角(Ⅷ・3・2・2 4)、地震時慣性力(Ⅷ・3・2・2 8)、許容応力度(建築基準法施行令第90条・第91条による)。 Amazonで見る
  • 道路土工-擁壁工指針(平成24年度版、日本道路協会): 荷重の組合せ(4-2-1(2))、載荷重(4-2-3)、地震の影響(4-2-6)、許容応力度と割増し係数(表4-2〜表4-5、表4-10)、試行くさび法と地震時土圧(5-2-4(2)(5)、式(解5-8)(解5-9))、土圧の作用面(5-2-4(1))、壁面摩擦角と仮想のり面傾斜角β′(解表5-2、解図5-5)、転倒・滑動の照査(5-3-2)、片持ばり式擁壁の部材の荷重と照査断面(5-7-5(3)、解図5-40・解図5-44〜解図5-48、式(解5-37))。 Amazonで見る
  • 建築基準法施行令 第90条・第91条、平成12年建設省告示第1450号: 盛土等防災マニュアルの解説を選んだ場合の許容応力度。 Amazonで見る

設計水平震度・許容安全率・許容応力度・土質定数は参考の既定値を入力していますが、適用する事業・地域・地盤条件により異なります。

設計基準と検討ケースの選択で自動入力が変わるのは、許容安全率・コンクリートの単位体積重量・許容応力度・設計水平震度で、土質定数(γ・φ・Ka・μ)は変わりません。採用値の妥当性、支持地盤の許容支持力度、根入れ深さ、排水工、地下水位の影響、背面土の締固めは、設計者が別途確認してください。

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