土留(山留め工)の設計(有限要素法)|掘削段階ごとの変位・応力

v1.0.1 最終更新日: 2026-09-30

インストール不要で使える無料の山留めFEM解析フリーソフトです。左右対称の掘削を半断面でモデル化し、根切りに伴う解放力を段階ごとに作用させる逐次解析を行います。地盤は地層ごとに線形弾性または修正カムクレイ(弾塑性)を選択でき、山留め壁は梁要素、切梁は軸ばねとしてモデル化します。計算はすべてブラウザ内(Web Worker)で実行されます。

このツールで検討できること
  • 根切りに伴う山留め壁・支保工・周辺地盤の挙動を、有限要素法(平面ひずみ)の掘削段階解析で求めます。地層ごとに線形弾性と修正カムクレイ(弾塑性)を選べます。
  • 掘削段階ごとに、変形図・変位/応力のコンター図・山留め壁の断面力図(曲げモーメント・せん断力・軸力)・切梁軸力・背面地表面の沈下を出力します。
対象外・注意が必要な条件
  • 山留め壁・支保工の断面算定(許容応力度の照査)は行いません。断面の検討には「土留(山留め工)の設計(慣用法)」をお使いください。有限要素法は、指針でも特殊な条件下の山留めや周辺への影響検討に用いる方法と位置づけられています。
  • 山留め壁と地盤は節点を共有した剛結として扱います。壁面のすべり・背面の離間(ジョイント要素)は考慮しないため、壁の変形は慣用法や梁-ばねモデルより小さめに出ます。
  • 土は有効応力、水は静水圧として扱います(土水分離)。水位は背面側と掘削側で別に与え、その差を山留め壁への水圧差と壁下端の揚圧力として作用させますが、壁先端を回る浸透流は解きません。ボイリング・盤ぶくれの検討は別途行ってください。
  • 掘削の左右対称を前提とした半断面モデルです。偏土圧・地盤の高低差・非対称な支保工配置は扱えません。
  • 根切り底面の安定(ヒービング・盤ぶくれ)、山留め壁の根入れ長の決定、切梁の座屈・断面照査は対象外です。

適用範囲と計算上の仮定をすべて見る

山留め設計指針 6.4.5 の解説に従い、まず自重のみを作用させた初期応力(K0手続き)をつくり、根切りに伴う解放力を掘削段階ごとに順次作用させて施工過程を模擬します。地盤は4節点アイソパラメトリック要素、山留め壁は1次元梁要素、切梁は対称面での軸ばねとしてモデル化します。掘削段階は、切梁の「設置する時点の根切り深さ」から自動的に組み立てられます。土は有効応力、水は静水圧として別に扱い(土水分離)、背面側と掘削側の水位差は山留め壁への水圧差として作用させます。

1. 全般条件

根切り底からの長さです。山留め壁の全長は「最終根切り深さ+根入れ長さ」になります。

左右対称の掘削として、この幅の1/2(対称面から山留め壁まで)をモデル化します。切梁の長さもこの幅とします。

掘削前から地表面に載っているものとして、初期応力に含めます。掘削した範囲の上載荷重は、その段階で取り除かれます。

地表面からの深さ(GL-m)で入力してください。土は有効応力、水は静水圧として別に扱います(土水分離)。この深さより下では、有効応力の算定に水中単位体積重量(γsat−γw)を用います。

排水によって下げた掘削側の水位を、その段階の根切り底からの深さで入力してください。0とすると根切り底と同じ高さになります。背面側との水位差は、山留め壁を掘削側へ押す水圧差(根切り底より浅い側が三角形、深い側が一定の分布)と、壁下端の揚圧力として作用します。

通常は9.8 kN/m3とします。

2. 解析条件

山留め壁から解析領域の背面端までの距離です。指針6.4.5では、山留め壁背面の領域を根切り部の広さに対して十分大きく取るよう求めています。境界付近の変位が十分小さいかを確認してください。

メッシュの基本間隔です。値を小さくするほど精度が上がりますが、計算時間が増加します。

3. 地層条件

地表面から下方へ順に積み重なります。最下層の下端が解析領域の下端になります(山留め壁の下端より十分深く取ってください)。掘削は除荷が主体となるため、変形係数Eには除荷・再載荷時の値を用いてください。

最大10層
地層名 解析モデル 下端GL-(m) E(kN/m2) ν γt(kN/m3) γsat(kN/m3) K0
1
2

掘削は地盤の除荷が主体となるため、除荷・再載荷時の変形係数を用いてください(載荷時の値より大きくなります)。

掘削前の初期応力(K0手続き)で、鉛直応力に対する水平応力の比として用います。

圧密特性(修正カムクレイを選択した地層のみ入力)

上の表で「修正カムクレイ」を選択した地層の行のみ入力してください(線形弾性の行は自動的に非表示になります)。掘削の除荷挙動は膨潤指数κが支配します。

λ κ M e0 OCR

4. 山留め壁

壁幅1mあたりの曲げ剛性EIと軸剛性EAを、断面性能から求めます。親杭横矢板・SMWでは1本あたりの断面性能を設置間隔で除して換算します。

鋼材では 2.05×10^8 kN/m2(205 kN/mm2)です。

鋼矢板は壁幅1mあたり、親杭横矢板・SMWは1本あたりの値を入力してください。

鋼矢板は壁幅1mあたり、親杭横矢板・SMWは1本あたりの値を入力してください。鋼矢板はカタログの単位質量から A(cm2/m)=質量(kg/m2)÷7.85 で概算できます。

継手部のずれによる曲げ剛性の低下を見込む割合です。断面積(軸剛性)には掛けません。

親杭1本あたりの断面性能を、この間隔で除して壁幅1mあたりに換算します。

芯材1本あたりの断面性能を、この間隔で除して壁幅1mあたりに換算します。

5. 支保工

切梁は対称面での軸ばね(長さは掘削幅の1/2)としてモデル化します。段ごとに「設置する時点の根切り深さ」を入力すると、その順序がそのまま掘削段階になります。自立式では段数を0にしてください。

最大5段
切梁の設置深さ GL-(m) 設置する時点の根切り深さ GL-(m)
1

切梁1本あたりの断面積です。軸ばねの剛性は EA/(掘削幅/2)÷水平間隔 として、壁幅1mあたりに換算します。

切梁の水平方向(壁に沿う方向)の設置間隔です。

6. 結果測定点

山留め壁の位置を0とし、背面側を正、掘削側を負として指定してください。各測定点の位置には必ずメッシュの節点が生成されます。

最大10点
点名 x(m)壁からの距離 y(m)深さ
1
2
3

リアルタイムプレビュー(解析モデル)

入力に応じて自動更新

計算方法と適用範囲

このツールで計算できること

根切りに伴う山留め壁・支保工・周辺地盤の挙動を、有限要素法(平面ひずみ)の掘削段階解析で求めます。土は有効応力・水は静水圧として扱い、背面側と掘削側の水位差を山留め壁への水圧差として作用させます。左右対称の掘削を半断面でモデル化し、掘削段階ごとの変形図・変位/応力のコンター図・山留め壁の断面力図・切梁軸力を出力します。計算はすべてブラウザ内(Web Worker)で実行されます。

計算方法・使用式

  • モデル化: 山留め設計指針 6.4.5(図6.4.22)に示された組み合わせに従い、地盤を4節点四辺形要素(Q4、2×2ガウス積分)、山留め壁を1次元梁要素、切梁を軸ばねとしてモデル化します。左右対称の掘削として、対称面から山留め壁を経て背面端に至る半断面を解析します。
  • 境界条件: 対称面と背面端は水平ローラー(水平変位を拘束)、解析領域の下端は鉛直ローラー(鉛直変位を拘束)です。
  • 初期応力: 水平成層を仮定したK0手続きにより、自重と上載荷重による鉛直有効応力σ′v0(地下水位以深は水中単位体積重量で積算)と、σ′h0 = K0・σ′v0 を解析解で与えます。水圧は等方に作用するためK0を掛けません。この状態を変位ゼロの釣合い状態とします。
  • 水圧: 土は有効応力、水は静水圧として別に扱います(土水分離。指針4.2 の側圧算定と同じ考え方)。背面側は入力した地下水位、掘削側は排水によりその段階の根切り底から指定した深さまで下げた水位とし、山留め壁が遮水する範囲(壁の下端まで)で水位差を保ちます。

    この水位差は、山留め壁を掘削側へ押す水圧差(根切り底より浅い側が三角形、深い側が一定の分布)と、壁の下端に生じる揚圧力として作用します。掘削側の水位低下に伴う有効応力の増加も、段階ごとに反映されます。

  • 掘削段階: 切梁の「設置する時点の根切り深さ」を浅い順に並べ、「その深さまで掘る→切梁を設置する」を繰り返し、最後に最終根切り深さまで掘削する段階列を自動的に組み立てます。切梁を使わない自立式では、最終根切り深さまでの1段階になります。
  • 解放力: 各段階で取り除く要素の内力(∫Bᵀσ′dV)に、掘削の前後で変わる外力の差(取り除いた要素の有効自重と上載荷重、掘削側の水位低下による有効自重の増加、水位差による水圧の荷重)を加えた不釣合い力を、残る系に作用させます。指針6.4.5の解説にある「自重解析を行った上で、根切りに伴う解放力を順次作用させる」手順にあたります。
  • 線形弾性層: 変形係数Eとポアソン比νによる等方弾性体です。初期応力からの増分形(σ = σn + D・Δε)で解きます。
  • 修正カムクレイ層: 圧縮指数λ・膨潤指数κ・限界状態応力比M・初期間隙比e0・過圧密比OCR・K0を用いる弾塑性構成則です。解放力を増分に分けてNewton-Raphson反復で解き、収束しない場合は増分を自動で二分割します。掘削は除荷が主体となるため、変形は主に膨潤指数κが支配します。
  • 山留め壁: 曲げ剛性EIと軸剛性EAをもつ梁要素です。断面性能は壁幅1mあたりに換算し、鋼矢板では継手部のずれによる曲げ剛性の低下を有効率で見込み、親杭横矢板・SMWでは1本あたりの断面性能を設置間隔で除します。
  • 切梁: 対称面までの長さ(掘削幅の1/2)をもつ軸ばね(ばね定数 EA/(掘削幅/2)を水平間隔で除した値)として、山留め壁の該当節点に取り付けます。設置した時点の壁の変位を基準とするため、設置直後の軸力は0で、そこからの掘削で軸力を負担しはじめます。

入力と出力

入力: 山留め工法・壁の種類・最終根切り深さ・根入れ長さ・掘削幅・上載荷重・背面側と掘削側の地下水位・水の単位体積重量、解析条件(背面側の解析幅・メッシュ基本ピッチ)、地層構成(層下端深さ・解析モデル・E・ν・γt・γsat・K0、修正カムクレイ層はλ・κ・M・e0・OCR)、山留め壁の断面性能(E・I・A)、切梁の段数・設置深さ・設置時の根切り深さ・断面性能・水平間隔、結果測定点。

出力: 掘削段階ごとの、山留め壁の水平変位・曲げモーメント・せん断力・軸力の分布図、切梁軸力(1本あたり・壁1mあたり)、変形図(倍率調整可)、水平/鉛直変位と水平/鉛直有効応力のコンター図、背面地表面の最大沈下、根切り底面の最大隆起、測定点の数値。

適用範囲・計算上の仮定

  • 2次元平面ひずみ(奥行き方向に一様な断面)の静的解析です。左右対称の掘削を前提とした半断面モデルのため、偏土圧・地盤の高低差・非対称な支保工配置は扱えません。
  • 山留め壁・支保工の断面算定(許容応力度の照査)は行いません。断面の検討には「土留(山留め工)の設計(慣用法)」をお使いください。指針でも有限要素法は、特殊な条件下の山留めや周辺への影響検討に用いる方法と位置づけられています。
  • 山留め壁と地盤は節点を共有した剛結として扱います。壁面のすべり・背面の離間(ジョイント要素)や壁面摩擦は考慮しません。このため壁の変形は、主働・受働状態の発達を前提とする慣用法や梁-ばねモデルより小さめに出ます。地盤を線形弾性とした場合はせん断破壊が生じないため、その傾向がより強く出ます。
  • 同じ理由で、山留め壁は鉛直方向にも地盤と一体で動きます。根切り底面の隆起が大きい条件では壁が浮き上がり、その近傍の背面地表面まで浮き上がる結果になることがあります。壁面ですべりが生じないためで、壁の直背面の沈下は実際より小さく(場合によっては隆起側に)評価されます。背面地表面の沈下は、壁からある程度離れた位置の値で判断してください。
  • 水圧は静水圧として与えます。壁先端を回る浸透流は解かないため、指針 図4.2.2(b) の湧水勾配 i による水圧係数の補正(Kwa=1−i、Kwp=1+i)は行っていません。掘削側の水位を大きく下げる場合や、遮水性の低い山留め壁を用いる場合は、水圧の評価が実際と離れることがあります。
  • 間隙水圧の時間変化(圧密の進行)は解析しません。掘削側の水位は各段階で指定した位置まで下がっているものとして扱い、水位低下に要する時間や圧密沈下の進行は追えません。
  • 根切り底面の安定(ヒービング・盤ぶくれ・ボイリング)、山留め壁の根入れ長の決定、切梁の座屈・接合部の検討、腹起し・火打ち・中間杭の設計は対象外です。水位差が大きい場合は、指針6.3の根切り底面の安定の検討を別途行ってください。
  • 掘削は各段階で一度に行うものとし、施工速度・放置期間・切梁のプレロード・温度応力は扱いません。
  • 要素サイズ・解析領域の広さが結果に影響します。背面側の解析幅や解析深さを変えて、結果が大きく変わらないことを確認してください。

使用基準・参考文献・設計者が確認すべき事項

  • 日本建築学会「山留め設計指針」2017年(第3次改定)6.4.5 有限要素法(FEM): 地盤・山留め壁・支保工のモデル化、施工段階ごとの逐次解析の手順、解析領域と要素分割の考え方、水圧の扱い(有効応力解析の必要性)を含む適用上の留意点。 Amazonで見る
  • 同書 4.2 側圧、図4.2.2 水圧の考え方: 土圧と水圧を分けて評価する考え方(土水分離)と、背面側・掘削側の水圧の与え方。
  • 有限要素法(平面ひずみ・Q4要素・2次元梁要素)の標準的な定式化。
  • 修正カムクレイモデル(Roscoe, K. H. and Burland, J. B.、1968年): 限界状態土質力学に基づく弾塑性構成則。

変形係数・カムクレイパラメータ(λ・κ・M・OCRなど)は、掘削が除荷であることを踏まえ、除荷・再載荷時の値として試験結果から設定してください。解析結果の妥当性(メッシュ依存性・境界条件・実測との整合)の確認、近接構造物への影響評価、計測管理計画は設計者が別途行ってください。

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